【刑法】 お薦めの基本書2
■刑法
【総論】
刑法総論については、行為無価値・結果無価値の対立があるが(ちなみに私の母校では何故か行為反価値・結果反価値という表現がされる)、 判例は基本的には行為反価値なので、初学者は行為反価値から学習し始めた方が無難かもしれない。
行為無価値の最近の基本書で信頼できるものは少ない。最近のものに限って言えば、本書が唯一と言っても良いかもしれない (大塚先生の本も最近改訂されているが、内容自体はあまり変わっていない。行為反価値の隠れた大家・中森先生が総論を書けばよいのだが…… )。
但し、本書の内容は必ずしも伝統的な行為無価値論に従ったものではなく、結果無価値論に近い箇所も少なくない。例えば、 川端先生は行為共同説を採用される。
ちなみに、応用編としては井田先生の 『刑法総論の理論構造』があり、厳密には基本書ではないけれど、法務総合研究所の『刑法総論講義案』 (いわゆる書記官本)もある。『刑法総論講義案』 は使ってる人も多いと思う。
ようやく出版された西田先生の総論の基本書。山口先生の本はやや急進的な見解を採用されるので、「穏当な」結果無価値説を採用したいのであれば、
本書が良いのではないかと。
ただ、共犯部分は西田先生のご専門であり、独自の見解が主張されている。
【各論】
各論については、行為無価値・結果無価値を問わず、この本が最適なのではないかと。記述も正確、かつ信頼できる。
ただ、やはり共犯が絡む部分では西田先生の独自の見解が少しだけ顔を出すので、その部分は注意が必要。あと、当然ながら、 文中に登場する違法性・責任の内容は、結果無価値説の論者が言う違法性・責任なので、行為無価値の人はその部分に注意して読む必要がある (と言うか、読めて当然なんだけどね)。
詳細な基本書としては山口先生の本が、逆に簡潔な基本書としては中森先生の本がある。ただ、中森先生の本は京大で講義をとる人はともかく、一般的には評判が悪い(^_^;)。
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