【民法】 民法94条2項の類推適用について
久々に更新。
まず、類推適用についての定義。
「類推適用とは、ある事態Aに対して規定Xが用意されているときに、事態Aそのものではない――したがって、直接には規定Xの要件に該当しない――が本質的な点では事態Aと同一であると考えられる事態Bについて、規定Xを適用して事態Aと同じように扱うこと」を言う(佐久間毅『民法の基礎1 第2版』〔有斐閣、2005年〕132頁)。
要するに、
【大前提】 事態A ――→ 規定X ――→ 効果P
【小前提】 事態A ≒ 事態B
【結 論】 事態B ――→ 規定X ――→ 効果P
ということである。
ところで、予備校や学生はやたらこの類推適用を認める。
もちろん、民法では類推適用を用いる必要性・許容性は高く、佐久間先生の前掲書も民法では「類推適用が広く認められている」とする。
しかし、94条2項に限って言うと、類推適用し過ぎである。
結論から言えば、94条2項が適用できるような事例というのはかなり少ない。
少なくとも、判例はそう簡単には認めない。
佐久間先生の言葉を借りれば、そもそも類推適用を為すには、問題となっている事態の本質的な点が直接適用の場合と「同一」と言えなくてはならない。
94条2項の直接適用が可能な事態とは、通謀虚偽が可能な事態であり、その本質の1つは高度の帰責性である。
そして、この通謀虚偽は、場合によっては刑法上の犯罪に該当する可能性があるぐらい帰責性の高い行為である(強制執行妨害罪〔刑法96条の2〕、競売妨害罪〔同96条の3〕、詐欺罪〔同246条〕)。
従って、94条2項の類推適用を行うのであれば、少なくともこの程度の高度の帰責性が必要である。
94条2項については、「信頼の対象は何か?」、「公信問題と対抗問題の区別(177条・178条の場面か94条2項・192条の場面か)」などの問題もあるが、それはまた別の投稿で。
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