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2006年4月29日 (土)

【民法】 善意・悪意

法律用語で、 善意とはある事実を知らないことを意味し、 悪意とはある事実を知っていることを意味する。


これは、法律解釈学の基礎の基礎であり、法学入門や民法総則で習うぐらいの基礎レベルの事項である。

そして、この善意・悪意は、少なくとも民事法・商事法では頻出する概念である。

 


 

だが、この善意・悪意を正確に理解していない人が、実は多い。

 

つまり、各条文・各制度で問題になっている事項が何であるかについて注意を払っていないことが多いのである。

平たく言えば、「何について善意」・「何についての悪意」が問題になっているかを曖昧なまま記憶していることが多いのである。


例えば、民法94条2項は文言や条文の位置から分かるように、意思表示を対象とする条文である。
従って、そこで言う「善意」とは、「その意思表示が虚偽であることについて善意」ということを意味する。

 


 

そして、94条2項類推適用の場合はこの「意思表示」が「法律行為」や「物権変動」に敷衍されているので、94条2項類推適用の場合の「善意」とは、「その法律行為 (物権変動)が虚偽であることについて善意」ということを意味する。

 


 

勿論、実際の訴訟では、登記の記載事項に対する信頼があれば、 その登記の背後にある法律行為や物権変動に対する信頼があると推定されるので、94条2項類推適用の場合の「善意」とは 「登記の記載事項が虚偽であることについての善意」を意味すると言っても間違いではない。

 


 

「94条2項類推適用法理は、現在では登記 ()に対する信頼を保護する制度になっているとする見解が有力である。この見解によるならば、 94条2項類推適用法理における『善意』とは、登記(等の外形) を認識し、その認識に基づいて名義人が権利者であると信じたこと、ということになる」佐久間毅 『民法の基礎1 第2版』〔有斐閣、2005年〕139頁

 


 

しかし、本来的には、やはり「その法律行為(物権変動)が虚偽であることについて善意」ということを意味するのである (繰り返しになるが、 上記の見解が間違っているとかそういう訳ではない)。

 


 

善意・悪意――に限ったことではなく、およそ法律の概念――は正確に使って欲しい。

 


 

もし、正確に使おうというキモチが少しでもあるのであれば、 手始めに、善意・悪意という言葉に出会うたびに、「何についての善意・悪意なのか?」 ということに注意して欲しい。

 


 

こういう小さな習慣を繰り返せば、 きっと堅実な解釈論を展開できるようになるはずである。

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