【民法】 集合将来債権譲渡の特定性・その2 〔判例〕
将来発生する債権を現在譲渡することの有効性自体は、実は、今日ではほぼ争いは無い。
問題になっているのは、その限界である。
特に、集合将来債権譲渡担保のように、将来債権を包括的に譲渡する場合にこの限界が問題となる。
具体的に言うと、主として2つの点が問題となる。
即ち、
(1)
そのような将来債権の包括的譲渡は譲渡人の資力や営業財産を剥奪するものであり、
営業の自由を侵害しているのではないか
(2) 譲渡人の将来債権を包括的に譲り受けると、責任財産を包括的に譲り受けることになり、 譲渡人に対する他の債権者を害するのではないか
という問題である。
そして、この将来債権譲渡の限界(有効性) という問題については、様々な学説が主張されているが、判例レベルに限って言えば、2つの考え方に大別できる。
即ち、(ア)債権発生確実性必要説と(イ)債権発生確実性不要説 (自己決定説) である。
(ア)債権発生確実性必要説は、最判昭和53年12月15日判時916号25頁で示された理論 (但し、傍論)であり、 将来債権の譲渡が有効性としては債権の発生が確実であることが必要十分条件である、とするものである。
他方、(イ)債権発生確実性不要説(自己決定説)は、最判平成11年1月29日民集53巻1号151頁で示された理論であり、 債権譲渡契約締結時に債権発生の可能性・確実性・特定性が低かったことは、契約の効力に影響を及ぼさない、とするものである。
即ち、「将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約にあっては、 契約当事者は、譲渡の目的とされる債権の発生の基礎を成す事情をしんしゃくし、右事情の下における債権発生の可能性の程度を考慮した上、 右債権が見込みどおり発生しなかった場合に譲受人に生ずる不利益については譲渡人の契約上の責任の追及により清算することとして、 契約を締結するものと見るべきであるから、右契約の締結時において右債権発生の可能性が低かったことは、 右契約の効力を当然に左右するものではないと解するのが相当である」。
そして、この(イ)債権発生確実性不要説(自己決定説)が、現在の判例である。
ただ、この判例の意味を正確に理解していない学生が多い。
つづく。
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