【民法】 信頼関係破壊の法理
「信頼関係破壊の法理」というキーワードでここに来る人がチラホラとおられるので、前にも書いたが、今日は信頼関係破壊の法理について。
ただし、今日は、とても基礎的なお話。
いわゆる信頼関係破壊の法理とは、賃貸借契約に対する民法541条などによる解除を制限する法理で、判例によって確立されたものである。つまり、条文には無い法理である。
即ち、「およそ、賃貸借は、当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切って、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあつた場合には、相手方は、賃貸借を将来に向って、解除することができるものと解しなければならない、そうして、この場合には民法541条所定の催告は、これを必要としないものと解すべきである」(最判昭和27年4月25日民集6巻4号451頁)。
従って、判例によれば、賃貸人が民法541条などに基づいて解除権を行使したとしても、賃借人の側で「信頼関係は破壊されていない」ということを主張・立証すれば、その解除権の行使は認められないことになる。
そして、信頼関係破壊の法理は、賃料不払や用法遵守義務違反などを理由とする催告型の解除権の行使を制限するだけでなく、無催告解除特約の制限法理としても機能する。
また、逆に、信頼関係が破壊されていることが認定されれば、無催告解除が許されることになる。これも信頼関係破壊の法理の機能である。
つまり、信頼関係破壊の法理は、信頼関係が破壊されていなければ賃借人を篤く保護するが、信頼関係が破壊されていれば賃借人の地位を奪うという賃借人にとっては「諸刃の剣」のような存在なのである。
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