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2006年5月19日 (金)

【民法】 公信問題と対抗問題・その1

今日は、 公信問題と対抗問題について、一言。

 

 

■定義

物権法の大家・鎌田薫先生のご説明によれば、

 

対抗問題とは、「物権変動が有効に生じていることを前提として、 その効力を第三者に対抗することができるか」という問題

 

であり、

 

公信問題とは 「外観上は正当な所有者のように見える無権利者からの譲受人が所有権を取得し得るか」という問題

 

である(鎌田薫『民法ノート物権法 1 〔第2版〕』〔日本評論社、2001年〕)。

 

 

そして、両者は明確に区別され、対抗問題においては、177条に基づいて登記の有無・ 先後によって権利関係の優劣が決せられるのに対し、公信問題においては登記の有無・ 先後によっては問題を処理することができないとされている。

 

 

よって、不動産物権変動の効力ないし不動産物権変動相互間の優劣が争われている問題について、判例・通説の考え方に従えば、 何よりもまず、その問題が177条によって解決されるべき問題(対抗問題)か、それとも、無権利者からの譲受人の保護の問題 (公信問題) なのかを見極めることから始めなければならない

 

実際、この対抗問題と公信問題の区別がついていない為に、論理的に破綻している答案が少なくない。

 

具体的に言えば、94条2項類推適用が問題になるのは公信問題の場合だけであり、 177条が問題にならない場合に初めて問題になるのである。

 

従って、177条と94条2項類推適用を同時に適用可能とすると原則として論理破綻である(尚、ここで問題にしているのは94条2項の類推適用であり、直接適用ではない)。

 

つまり、177条を適用できるのであれば94条2項類推適用はできないし、 逆に94条2項を類推適用できるのであれば、177条は適用できないのである。

 

設例に即して説明しよう。
例えば、以下の2問を判例・伝統的通説の立場に従って解いてみて欲しい。

 

【設例1】
Yは、GからG所有の建物甲を購入したが、税金対策のために、息子Xが購入したことにしようと考え、Xに相談しないまま、 売買を原因としてGからXへの移転登記をおこなった。ところがその後、Xは借金に苦しむようになり、 建物甲が自分名義になっていることを奇貨として、建物甲をZに売却し、登記もZに移転した。YZ間の法律関係について述べよ。

 

【設例2】
Aは、Bと通謀して、税金対策の為に売買を仮装して自己の所有する土地乙の登記名義をBに移転した。ところが、 Bは土地乙をAB間の虚偽表示について善意無過失のCに売却してしまった。その後、Aは、土地乙をDに売却した。 CD間の法律関係について述べよ。

 

解けたであろうか?

結論から言えば、【設例1】は公信問題であり、【設例2】は対抗問題である。

つづく

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コメント

いつも大変参考にさせてもらってます。

今回のテーマで少し混乱が生じてしまったので質問させてください。

不動産の場合は94条2項類推適用と177条は同時に適用することは論理矛盾という話でしたが、

設例2においてAとBが売買の仮装ではなく設例1のXとYのように意思の連絡なく土地乙の登記について虚偽の外観を作出した場合を想定した場合、

Cは94条2項類推適用の要件(Aの虚偽の外観への強い帰責性)を満たさなければ有効に土地乙を取得できず、したがってDは登記なくして無権利者であるCに対し乙の所有権を主張できる。

一方、Cが94条2項類推適用の要件を満たすのであれば、CとDは対抗関係に立ち、177条によりDはCに対し登記なくして乙の所有権を対抗できない。

という結論になると考えたのですが、この考え方は論理矛盾なのでしょうか。
それともこの場合は94条2項類推適用と177条を同時に適用することにはならないので論理矛盾は生じないということなのでしょうか?

投稿: NT | 2011年3月10日 (木) 21:48

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