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2006年5月29日 (月)

【会社法】 支配人概念について・その2

以上が、従来の学説の整理であるが、個人的にやや疑問に思うことを2点述べたい。


第1は、形式説という名称について、である。
既に述べたように、形式説によれば、支配人であるか否かは、主任者としての地位があるか否かという形式的な要素で判断される。

それ故に、形式説と呼ばれる訳だが、実は形式説における支配人該当性自体の判断は形式的ではない


何故ならば、「主任者」としての地位の有無は名称の有無と同義ではないからである。

つまり、形式説によったとしても、支配人であるためには、「主任者」と言い得る程度の代理権が必要なのである (少なくとも今日の形式説内部ではそう解する見解が多いであろう)。

従って、形式説でも「主任者」と言えるか否かについては、実質的な判断を求められるのである。
その意味で、形式説という名称はミスリーディングではないか。


第2は、形式説と実質説の差異について、である。

形式説について、京大名誉教授の上柳先生は、次のように述べられる。


形式説によれば「本店または支店の営業の主任者は、 その代理権について可成りの制限を加えられていても、支配人と解すべきであり、表見支配人は、 本店または支店の営業の主任者でないのに、その営業の主任者たることを示すべき名称を附された使用人に限られる」上柳克郎 『商事法論集』〔有斐閣、1999年〕310頁より抜粋)。


問題は、「その代理権について可成りの制限を加えられていても、支配人と解すべきであり」という部分である。

つまり、既に述べたように、形式説でも、「主任者」と言うためには、「支配人である以上、 支配権と認められる程度の包括的代理権が付与されていなければならない」のである(森本滋 『商法総則講義 第2版』〔成文堂、1999年〕97頁より抜粋)。

従って、「代理権について可成りの制限」がある場合には、その者は支配人ではあるまい。

翻って考えると、支配人概念については理論上激しく争われているが、実際上の結論の差は小さいものと考えられる。

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