【会社法】 支配人概念について
今日は、支配人(商法21条・ 会社法11条)概念についての話。
まず、従来の学説の整理をしよう。
支配人概念については、学説上、争いがあり、有名な論点となっている。
伝統的通説(実質説)によれば、支配人とは営業主から営業に関する包括的代理権を与えられた商業使用人を言う。
これは、商法21条1項・会社法11条1項が支配人の代理権として「一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限」を挙げている以上、 支配人と言うためにはこのような包括的代理権が必要と考えられるという理由に基づく。
つまり、伝統的通説によれば、支配人であるか否かは、「支配人」・「支店長」などの形式的な名称ではなく、
包括的代理権という実質的な要素で決定されるのである。
そのため、この見解は実質説とも呼ばれる。
他方、有力説によれば、支配人とは「本店又は支店の主任者としての地位を与えられている商業使用人」 を言う。
これは、支配人制度の趣旨は 「取引の相手方が代理権の有無や範囲を探究することなく支配人であることを確かめるのみで安心して取り引きできるようにしようとする」 点にある以上、支配人の要件は形式的に決するべきである、という理由に基づく。
従って、この見解によれば、支配人であるか否かは、
主任者としての地位があるか否かという形式的な要素で判断される。
そのため、この見解は形式説とも呼ばれる。
ちなみに、有力説は、元・京大名誉教授の大隅先生によって主唱されたため、京大系の先生を中心に支持が多く、 現在では多数説に近いと考えられる。
つづく
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