【民法】 混同 ――法定地上権と関連して・その4
今日は、間が開いてしまったが、法定地上権と混同についての話の続き。
前回までの話は、以下を参照していただければ幸いです。
【民法】 混同 ――
法定地上権と関連して
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_9a0a.html
【民法】 混同 ――法定地上権と関連して・
その2
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_dbf4.html
【民法】 混同 ――法定地上権と関連して・
その3
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_46b3.html
■事案
Xに対する土地抵当権設定時には土地所有者はA、建物所有者はBであった。 土地抵当権設定後に土地所有者Aが建物所有権をBから取得し、抵当権が実行された段階では土地・建物は同一所有者になっていたとする。
┌――┐
| | B → A
| |
――――――
A ←――抵当権者X
■前回までの復習
既に説明したように、この場合、AとBとの間で締結されていたはずの約定利用権は混同の例外として消滅しない (179条1項但書)。
民法179条1項 【混同】
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、
当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、
この限りでない
即ち、「その物」(=土地)が、 「第三者の権利の目的である」(=抵当権者Xの抵当権の目的である)ために、混同の例外が認められるのである。
初学者が間違えやすい点であるが、約定利用権が「第三者の権利の目的である」からではない (それは建物抵当の場合)。
ここまでは前回までの投稿で述べた。
■何故、 混同の例外が認められるのか?
では、何故、このような場合、混同の例外が認められるのか?
即ち、本件土地が抵当権者Xの目的になっていると、 何故、Aの約定利用権は消滅しないのか?
ここまで話を引っ張っておいて恐縮だが、結論は、単純至極である。
つまり、約定利用権を混同で消滅させてしまうと、 Xを不当に利することになってしまうからである。
そもそも、本件では、抵当権者Xが抵当権を設定した時点で既に約定利用権が存在している。
従って、約定利用権が対抗力を備えている限り、Xの抵当権はその約定利用権に劣後するものである。
そのため、Xの土地抵当権が把握している価値は非常に少ない。
Xの土地抵当権は、いわゆる「底地」としての価値しか把握していないのである。
これは、実務上、土地の利用権はその土地の交換価値の7~8割を占めるという点に基づく。
荒っぽいが数式的に説明すれば、
土地の価値 =
土地の利用価値 (=約定利用権が支配)
+ 土地自体の物質的価値 (=Xの抵当権が支配)
なのである(尚、 この数式の言葉の使い方は正確ではない)。
例えば、本件土地の交換価値が1億円であった場合、Aの約定利用権が約8000万円の価値を支配しており、 Xの抵当権は2000万円の価値しか支配していない。
それにも拘わらず、Aが建物所有権を取得したことを奇貨として、約定利用権が消滅するとすると、 Xの抵当権は一気に1億円の価値を支配することになってしまう。
これは不当である。
即ち、Xは、そもそも2000万円の価値を支配することを予定して抵当権を設定したのであるからXの抵当権の価値の「枠」 を広げる必要性は無いし、また、特に建物抵当権者がいた場合、その者に不測の損害を与える危険性が高いという点で許容性も無い。
それ故に、本件の場合、「第三者の権利の目的である」土地に対するAの約定利用権は、混同の例外として消滅しないのである。
……面白くも何とも無い結論で申し訳ない。
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投稿: e-アフィリ | 2006年6月30日 (金) 21:13