【民法・手形法】 表見代理と権利外観法理・その1
今日は、民法と手形法の事例を基にした、表見代理と権利外観法理についての話。
■事案の概要
検討素材となる事案は、最判昭和36年12月12日民集15巻11号2756頁。
とても有名な事案なので、民法の判例百選にも手形法の判例百選にも載っていると思うが、事案の概要を説明すると次のとおり。
Y
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A ―→ B ―→ C ―→ X
1. Aは、Y寺の経理部長である。
2. Aは、Y寺所有の山林の売却による前渡金の受領のために、「Y寺経理部長A」というゴム印と印章をBに預けた。
3. しかし、実際には前渡金の受領は為されず、それどころか、Bによって、Aの承諾無きまま、ゴム印&印章を用いた約束手形がCに振り出された。
4. その手形は、CからXに裏書された。
■判旨
最高裁は、次のように述べてXの上告を棄却した(X敗訴)。
「約束手形が代理人によりその権限を踰越して振出された場合、民法110条によりこれを有効とするには、受取人が右代理人に振出の権限あるものと信ずべき正当の理由あるときに限るものであつて、かかる事由のないときは、縦令、その後の手形所持人が、右代理人にかかる権限あるものと信ずべき正当の理由を有して居つたものとしても、同条を適用して、右所持人に対し振出人をして手形上の責任を負担せしめ得ないものであることは、大審院判例(大審院大正13年(オ)第601号、同14年3月12日判決、同院民集4巻120頁)の示す所であつて、いま、これを改める要はない。」
つづく
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