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2006年6月28日 (水)

【会社法】 新・会社法の基本書など

今日は、会社法の基本書などについて。


昨年成立した会社法については、その改正が余りに大きなものであったため、基本書などが充実しているとは到底言い難い状況にある。


とりあえず、現時点で入手できる書籍、もしくは近日中に入手できる書籍の中で有名なものや、旧会社法(旧商法)時代に定評のあったものを羅列すれば以下のとおり。


■入門書
神田秀樹『会社法入門 (岩波新書)』岩波書店、2006年

本書は東大教授の神田先生が書かれた入門書である。

神田先生は、今回の会社法制定を含めた一連の会社法改正に関与しており、最も信頼できる学者の1人である。

そして、本書は平易な言葉で書かれており、完全な会社法初学者でなければ、 入門書としては本書がお薦めである。

また、比喩も交えた説明の中には「なるほど!」と思うようなものもあり、その意味で初学者以外の方にも推薦できる。

ただ、本書はあくまで『入門書』である。これ1冊で革命的な知識の整理などができるわけではない。

 

 


■定番書
神田秀樹『会社法 第8版 法律学講座双書』 弘文堂、 2006年


同じく神田先生の基本書。
そして、こちらは、明らかに法律学の素養のある者を対象とした本である。


その内容は――さすがに鈴木会社法の後継本だけあって――非常に定評があり、記述も正確で信頼できる。

ただ、本書は、良かれ悪しかれコンパクトである。

つまり、良く言えば短時間で新会社法の概観を見渡すことができるが、悪く言えば記述が薄いのである。
従って、詳細な情報を知りたいの場合は、本書を購入してもあまり意味は無いだろう。

 


 

弥永真生 『リーガルマインド会社法 第10版』有斐閣、平成18年


筑波大学教授の弥永先生が書かれた基本書である。
本書は、司法試験界では定番中の定番と言え、その所為か、答案における論証を意識したような記述が多い。


但し、新会社法の説明という点では若干、難がある。
即ち、立法に関与していなかったせいか、新会社法の各規定の立法趣旨や制度の仕組みなどについての説明の分量が少なく、 ただ条文を羅列しただけ、という印象が否めないのである。


また、大学によっては、弥永先生の本を毛嫌いする先生もおられる。
とは言え、最も有名な基本書の1つであることは動かし難い事実である。

 

 


 

■近日中に出る定番書
前田庸 『会社法入門 第11版』有斐閣、 2006年7月10日発売予定


先頃まで、 長年に亘って法制審の会社法部会長を務めておられた学習院大学名誉教授の前田庸先生の基本書である。


岩波新書の神田先生の本と同じく『入門』と銘打ってあるが、その内容は全く『入門』ではない

むしろ、単著の書籍としては、江頭先生の体系書と並んで最も充実した「濃い」書籍の1つであり、会社法の素養がある者を対象としている。

そのため、学習用に「1冊」だけ基本書を買うのであれば本書を推薦する人は少なくないだろうが(個人的には有斐閣アルマの方が好みだが、これは「2分冊」である)、 入門書として推薦する人は皆無と思われる(笑)。


また、内容も非常に定評があり、記述も正確である。
従って、本書を繰り返し通読する時間と体力があるならば、会社法に精通することができるだろう。

 


 

 

江頭憲治郎 『株式会社法』有斐閣、 2006年発売予定


東大の江頭先生の体系書であり(内容の高度さから言って基本書とは言い難い)、単著としては、 恐らくわが国トップの完成度である。
江頭先生は、現在の商法学会で最も権威ある学者の1人であり、その理論・分析は非常に鋭い。
また、先生は実務に精通しておられ、その知識を解釈論にふんだんに反映されている。


その結果、本書は実務用の内容になっており、「司法試験では滅多に問われないが実務では重要な情報」も多く掲載されている。
法曹三者、企業の法務部勤務の方であればほぼ確実に購入すると思われる。


尚、現在では余りに有名なので紹介するまでもないと思うが、相澤哲検事や葉玉匡美検事(元LEC講師)による書籍も存在する。



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