光市母子殺害事件
最高裁判所の判決文
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=33235&hanreiKbn=01
asahi.com:朝日新聞の速報ニュースサイト
http://www.asahi.com/national/update/0620/TKY200606200370.html
Yahoo! ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060620-00000011-yom-soci
……最高裁は差し戻しましたか。
判決文から最高裁の判断部分を適宜引用すると、下記のとおりです(「……」部分は省略部分)。
この事実認定どおりであるならば、極刑が相当でしょうね。
ただ、極刑であるが故に慎重を期した裁判所の対応は、判例の統一を担う最高裁としては妥当な結論だったと思います。
ちなみに、司法の世界では大変有名な團藤重光先生(東大名誉教授、元最高裁判事、刑法・刑訴専攻)は、『死刑廃止論』という本を記されています。
------引用開始------
2 当裁判所の判断
(1)
死刑は,究極のしゅん厳な刑であり,慎重に適用すべきものであることは疑いがない。
しかし,……死刑制度を存置する現行法制の下では……各般の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択をするほかないものといわなければならない。
これを本件についてみると,被告人は,……強姦を遂げるため被害者を殺害して姦淫し,更にいたいけな幼児までも殺害した各犯行の罪質は甚だ悪質であり,2名の尊い命を奪った結果も極めて重大である。
各犯行の動機及び経緯に酌むべき点はみじんもなく,強姦及び殺人の強固な犯意の下に,何ら落ち度のない被害者らの生命と尊厳を相次いで踏みにじった犯行は,冷酷,残虐にして非人間的な所業であるといわざるを得ない。
さらに,被告人は,被害者らを殺害した後,被害児の死体を押し入れの天袋に投げ入れ,被害者の死体を押し入れに隠すなどして犯行の発覚を遅らせようとし,被害者の財布を窃取しているなど,犯行後の情状も良くない。
遺族の被害感情はしゅん烈を極め,これに対し,慰謝の措置は全く講じられていない。
……以上の諸点を総合すると,被告人の罪責は誠に重大であって,特に酌量すべき事情がない限り,死刑の選択をするほかないものといわざるを得ない。
(2)
そこで,特に酌量すべき事情の有無について検討するに……被害者らの殺害について計画性がないという点については,確かに,被告人は,強姦については相応の計画を巡らせていたものの,事前に被害者らを殺害することまでは予定しておらず,被害者から激しい抵抗に遭い,また,被害児が激しく泣き叫ぶという事態に対応して殺意を形成したものにとどまることを否定できず,当初から被害者らを殺害することをも計画していた場合と対比すれば,その非難の程度には差異がある。
しかしながら,被告人は,……それぞれ所期の目的も達しているのであり,各殺害が偶発的なものといえないことはもとより,冷徹にこれを利用したものであることが明らかである。してみると,本件において殺害についての計画性がないことは,死刑回避を相当とするような特に有利に酌むべき事情と評価するには足りないものというべきである。
また,原判決及び第1審判決は,被告人が,それなりに反省の情を芽生えさせていると見られることに加え,……矯正教育による可塑性が否定されていないこと,そして,これらによれば矯正教育による改善更生の可能性があることなどを指摘し,死刑を回避すべき事情としている。
しかしながら,記録によれば,被告人は,……基本的に犯罪事実を認めているものの,少年審判段階を含む原判決までの言動,態度等を見る限り,本件の罪の深刻さと向き合って内省を深め得ていると認めることは困難であり,被告人の反省の程度は,原判決も不十分であると評しているところである。
被告人の生育環境についても,……特に劣悪であったとまでは認めることができない。
さらに,被告人には,……いともたやすく見ず知らずの主婦をねらった強姦を計画した上,その実行の過程において,格別ちゅうちょした様子もなく被害者らを相次いで殺害し,……各死体を押し入れに隠すなどの犯跡隠ぺい工作をした上で逃走し,さらには,窃取した財布内にあった地域振興券を友人に見せびらかしたり,これでカードゲーム用のカードを購入するなどしていることに徴すれば,その犯罪的傾向には軽視することができないものがあるといわなければならない。
そうすると,結局のところ,本件において,しん酌するに値する事情といえるのは,被告人が犯行当時18歳になって間もない少年であり,その可塑性から,改善更生の可能性が否定されていないということに帰着するものと思われる。
そして,少年法51条……の趣旨に徴すれば,被告人が犯行時18歳になって間もない少年であったことは,死刑を選択するかどうかの判断に当たって相応の考慮を払うべき事情ではあるが,死刑を回避すべき決定的な事情であるとまではいえず,本件犯行の罪質,動機,態様,結果の重大性及び遺族の被害感情等と対比・総合して判断する上で考慮すべき一事情にとどまるというべきである。
以上によれば,原判決及びその是認する第1審判決が酌量すべき事情として述べるところは,これを個々的にみても,また,これらを総合してみても,いまだ被告人につき死刑を選択しない事由として十分な理由に当たると認めることはできないのであり,原判決が判示する理由だけでは,その量刑判断を維持することは困難であるといわざるを得ない。
(3)
そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく,被告人を無期懲役に処した第1審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だしく不当であり,これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
3 結論
よって,刑訴法411条2号により原判決を破棄し,本件において死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき更に慎重な審理を尽くさせるため,同法413条本文により本件を原裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官幕田英雄,同吉田統宏公判出席
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男)
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