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2006年6月22日 (木)

【民法】 「自己のためにする意思」と「所有の意思」

今日は、質問を受けたので「自己のためにする意思」と「所有の意思」について。

 

民法は、第2編第2章第1節で、「自己のためにする意思」 「所有の意思」 という2つの文言を用いている。

 

例えば、民法は180条では「自己のためにする意思」という文言を用い、185条では「所有の意思」という文言を用いている。

 

 

 

■条文

【占有権の取得】
第180条  占有権は、 自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

 

【占有の性質の変更】
第185条
  権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、 自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、 占有の性質は、変わらない。

 

 

 

■問題の所在

では、「自己のためにする意思」と「所有の意思」 は、別のものなのか?

そもそも、「自己のためにする意思」と 「所有の意思」とは何なのか?

 

 

 

■説明

我妻先生によれば、「自己のためにする意思」と「所有の意思」は次のように説明される。(詳細は、 我妻栄〔有泉亨補訂〕『新訂 物権法(民法講義2)』〔岩波書店、1983年〕467頁以下、 471頁以下参照

 



 

即ち、自己のためにする意思とは、 「所持による事実上の利益を自分に帰せしめようとする意思」であって、「占有」の成立要件の1つである。

 

換言すれば、自己のためにする意思が無ければ、占有自体が否定されることになる。

 

そして、この自己のためにする意思の特徴は、例えば以下の3点にある。

 

第1に、この意思は、 占有制度の趣旨の1つである社会秩序の維持に鑑み、かなり緩やかに捉えられている。そのため、自分のためにすると同時に、 他人のためにするものでも良い。

 

 

第2に、この意思の有無は客観的に、 占有権原の性質によって決せられる。

 

従って、「所有権譲受人・盗人・地上権者・永小作人・賃借人・使用借主・ 留置権者・質権者などは、さような権利者であるということだけで――これらの者は自己のためにする意思をもって所持するのが普通だから―― すべて自己のためにする意思を有すると見るべき」とされる(前掲我妻・ 468頁)。

 

 

第3に、自己のためにする意思は、 「自分の責任において物を所持する者には、たとい直接の利益を本人に帰する意思である場合にも、なお存在する」(前掲・我妻468頁)。

 

従って、受寄者・受任者・請負人・運送人・破産管財人・ 遺言執行者などにも自己のためにする意思は認められる。

 

 

他方、所有の意思とは、「所有者として占有する意思」 であって、自主占有・ 他主占有とを分かつ概念である。

 

換言すれば、所有の意思が無くても直ちに占有自体が否定される訳ではなく、ただ、 自主占有であることが否定されるだけである。

 

そして、所有の意思も占有権原の客観的性質によって決せられると考えられている。

 

 

 

■関連する拙稿

 【民法】 占有権の相続について(加筆訂正版)
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_2bd6.html

 

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