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2006年6月 9日 (金)

【民法】 混同 ――法定地上権と関連して

今日のテーマは、ちょうど質問を受けたので、法定地上権との関係における混同の話。

 

 

 

■定義

混同とは、 「併存させておく必要のない2個の法律上の地位が同一人に帰すること」を言う我妻栄/ 有泉亨補訂『新訂 物権法(民法講義2)』〔岩波書店、1983年〕249頁

 

 

 

■法定地上権の成立要件

民法388条によれば、法定地上権の成立要件は以下の4つである。



1.抵当権設定時における建物存在

2.抵当権設定時における土地・ 建物の同一所有者への帰属

3. 土地または建物への抵当権の設定

4. 抵当権の実行により所有者を異にする至ったこと



従って、要件のにより、抵当権設定時に土地所有者と建物所有者が異なっていた場合、 法定地上権は成立しない。

 

 

 

では、設定時には土地所有者と建物所有者が異なっていたが、 抵当権が実行された段階では同一所有者になっていた場合、法定地上権は成立するのであろうか?

 

 

結論から言えば、判例・多数説は、法定地上権の成立を否定する

 

 

そして、その理由は、次のように説明される。

 

 

「その理由を右判例は明らかにしていないが、多数の学説は、建物抵当のときは建物抵当権が約定利用権にも及んでおり、また、 土地抵当の場合は約定利用権の目的たる土地が第三者の抵当権の目的となっており、 いずれも約定利用権は混同の例外として消滅しないので(民法179条1項但書・520条但書、法定地上権を認めなくてもよいからであるとする」 松本恒雄「法定地上権」『民法判例百選1[第5版]』 188頁。引用文中の「右判例」とは最判昭和44年2月14日民集23巻2号357頁である。太字は引用者)。

 



 

今回、私が受けた質問は、この引用文の太字部分についてのものだった。

 

 

即ち、松本先生の 「土地抵当の場合は約定利用権の目的たる土地が第三者の抵当権の目的となっており、いずれも約定利用権は混同の例外として消滅しない」 という説明は、179条1項但書・520条但書の条文から出てくるのか?という質問であった。

 

 

 

■条文

民法179条 【混同】
1項
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、 その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

 

2項
所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、 前項ただし書の規定を準用する。

 

3項
前2項の規定は、占有権については、適用しない。

 

 

 

民法520条
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

 

 

 

 

■課題?

皆さんも、お時間があれば考えて頂きたい。

 

松本先生の説明を、 ちゃんと条文の文言に即して説明できるだろうか?

 

 

ちなみに、もう1つ問題がある。

 

松本先生の説明では、179条1項但書と520条但書が併記されているが、さて、どちらを使うべきであろうか?

 

即ち、設定時には土地所有者と建物所有者が異なっており、建物にだけ抵当権が設定されたが、 抵当権設定後に建物所有者が土地所有権を取得し、抵当権が実行された段階では同一所有者になっていた場合には、 混同の例外として建物の約定利用権は消滅しない。

 

このときの根拠条文は、 179条1項但書であろうか? それとも、520条但書であろうか?

 

つづく

 

【民法】 混同 ――法定地上権と関連して・その2
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