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2006年7月20日 (木)

【手形法】 善意取得と権利外観法理について

旧司法試験で手形法が正面から出題されたので(別に私は受験していませんが)、今日は、善意取得と権利外観法理について、簡単な話を。


■定義
善意取得とは、抽象的&形式的に言えば、手形の権利移転に瑕疵がある場合に、その瑕疵につき悪意・重過失なく、裏書の連続のある手形を裏書により又は最終の裏書が白地式のものを交付により取得した者が手形上の権利を取得するという制度を言う(手形法16条2項)。


権利外観法理とは、一般的には「真実に反する外観を作出した者は、その外観を信頼してある行為をなした者に対し外観に基づく責任を負うべきであるという理論」を言う。

但し、あくまで――建前上は――権利外観法理は例外的な法理である。


■手形法上の差異
端的に言えば、善意取得は「誰かが有する誰かに対する権利を奪う制度」であるのに対し、権利外観法理は「外観に対する信頼を保護するための制度」である。


つまり、善意取得は既にどこかで発生・存続している権利を対象とするが、権利外観法理は発生していない権利をも対象とするのである(信頼に応じて無から有が生じる)。


【設例】
Y -------- A ――→ X

     T

Yが統一手形用紙に署名後、同手形を保管していたところ、Tが同手形を盗取。
Tが他の手形要件を記入し、Aに手形を譲渡。
Xは、署名を信頼していた。


上記の設例において、交付契約説に立つ場合、Yは手形授受という契約をしていない以上、Yに対する権利は発生していない

従って、Xを保護する手段としては権利外観法理を使わざるを得ないことになる。

そして、この場合、XのYに対する権利はXのもとで発生すると考えられている。


他方、創造説に立つ場合、Yが署名した段階で、「YのYに対する権利」が発生している
従って、Xを保護する手段としては善意取得を用いることになる。

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