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2006年7月 8日 (土)

【法律学の基礎】 民法の解釈方法

アクセス解析を見ていると、このブログに「目的論的解釈」などのキーワードでお越しになられている方がおられるので、今日は、民法の解釈方法についての話。


ただ、「民法」と銘打ってはいるが、民法は私法の一般法であるから、本投稿が言わんとすることは、基本的には私法一般に妥当するはずである。


尚、本稿の内容は、以下の文献に大幅に拠っている。

遠藤浩ほか『民法(1)総則〔第4版増補補訂2版〕有斐閣双書』(有斐閣、2002年)18頁以下但し、最新版は2004年に出版された補訂3版である

星野英一『民法概論1(序論・総則)』(良書普及会、平成5年)48頁以下


そして、民法の解釈方法には幾つかのものがある。
即ち、文理解釈、論理解釈、目的論的解釈、反対解釈、類推解釈、拡張解釈、縮小解釈などである。


■文理解釈
文理解釈とは、「法規の用語の通常の意味に従い、文章の文法に従って解釈すること」(遠藤18頁)、「法規の用語や文章に従って法規を解釈すること」(星野49頁)を言う。

例えば、「芝生に犬を入れてはならない」という条文があった場合、文字どおり、「犬という種類に属する動物を芝生に侵入させてはならない」と解釈する場合である。

具体例としては、桃中軒雲右衛門事件(大判大正3年7月4日刑録20輯1360頁)で為された解釈がこの文理解釈である。


■論理解釈
論理解釈とは、「民法を1つの論理的体系に構成し、各法規をそれぞれしかるべき地位において、これと調和するような内容を与えようとする」解釈(遠藤18頁)、または「法律が一の論理的体系をなすように解釈すること」(星野52頁)を言う。

例えば、「過失」という言葉は民法の様々な条文に登場するが(93条、112条、162条、709条など)、これらの条文に登場する各「過失」の意義が体系的に整合性を有するように解釈する場合である。


■目的論的解釈
目的論的解釈とは、「法律の制定された目的を探求し、もし立法者がその目的に従って現在立法したとすればどのように立法するであろうかを推測して解釈すること」(遠藤19頁)を言う。

いわゆる「趣旨からの解釈」は、一般に、この目的論的解釈のことを指す。

ちなみに、この目的論的解釈と、よく混同されるものとして立法者意思解釈がある。

立法者意思解釈とは「立法の資料などによって、法規の立法当時の目的・意味を明らかにしてゆこうとする解釈方法」を言う(遠藤18頁)。

そして、立法者意思解釈では、立法当時の立法者の意思を基準にして解釈が為されるのに対し、目的論的解釈では、「現在の立法者の意思」というものを仮定して解釈が為される。


■類推解釈
類推解釈については以前述べたので、そちらを参照されたい。

尚、類推解釈と混同されやすいものとして拡張解釈がある。

拡張解釈とは、「Aは一見A’を含まないようだが、実はこれを含む、従ってXの効果が生ずる」とする解釈を言う(星野48頁)。

類推解釈と拡張解釈の違いは、A’を文言に含められるか否かという点にある。
つまり、類推解釈ではA’をその文言に含めることはできないという判断が前提とれさているが、拡張解釈では含めることはできるという判断が前提とされているのである。


尚、上記の文献以外に参考になるものとして、京大名誉教授である前田達明先生の『民法の”なぜ”がわかる』(有斐閣、2005年)165頁以下もある。

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