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2006年7月 3日 (月)

【手形法】 手形行為独立の原則と悪意者の関係・その2

今日も、前回と同じく手形行為独立の原則と悪意者の関係についての話。


■問題・その2
A → B → C → D → E


Aが手形を振り出し、Eまで転輾流通したとする。
ところが、実はBC間の手形行為は、CがBのもとから手形を盗取した上、偽造したものであった。
そして、DはCの偽造について悪意であったが、Dから裏書を受けたEは偽造について善意無過失であった。


このとき、EはCに対して遡求することができるか?


即ち、前回述べたように、政策説の中の多数説は、Dに手形行為独立の原則の適用を認めず、DはCに対して遡求することができない、とする。

では、そのDから手形を譲り受けた善意無過失のEは、Cに手形金の支払を請求することができるのだろうか?


■説明
結論から言えば、手形金の支払を請求することはできると考えられる。


何故ならば、「Dに手形行為独立の原則の適用が無い(=Dは手形行為独立の原則では保護されない)」ということは、「Cの手形債務が発生しない」ということと同義ではないと考えられるからである。


換言すれば、Dが手形行為独立の原則で保護されないと言っても、CD間で裏書(これ自体は適法)が為された時点で、Cの手形債務は発生しており、単にDはそれを行使することができないだけと考えられるのである。


従って、Eは、DのもとにあったCの手形債務を承継取得しているので、Cに対して遡求できると考えられるのである。


これは、民法における「背信的悪意者からの譲受人は『第三者』に当たるか?」という論点と基本的には同じ考え方である。


また、この理は手形行為独立の原則の根拠について当然説を採用する立場でも支持できると考えられる。


例えば、当然説を支持される前田庸先生は『手形法・小切手法入門』(有斐閣、昭和58年)210頁で次のように述べられる。


「手形行為独立の原則がDの善意・悪意にかかわらずに適用されるということは前述のとおりであるが、それはあくまでCが手形債務を負担するという債務負担面についていえることであり、そのようにして成立した債務に対応する権利をだれが取得し行使するかという権利移転の面は、手形行為独立の原則とは無関係な問題」である。


「そして、たとえばEがDからこの手形の裏書譲渡を受けて善意取得したときは、EはCに対して手形金を請求できることになる」

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