【民法】 親族・相続のお薦め基本書
ご要望がございましたので、今日は、親族・相続のお薦め基本書について紹介致します。
■親族・相続をカバーする基本書
二宮周平『家族法 第2版』(新世社、2005年)
親族・相続を1冊でカバーする基本書の中では、本書が最も無難だと思います。
著者の二宮先生(立命館大学教授)は、親族・相続法では有力な学者のお1人でして、本書の内容も信頼できます。
また、文章も平易なので内容も分かりやすいと思います。
本書の特徴は次のような点にあります。
1. グラフやフローチャートなどの図表を比較的多く使用することによって、読者の理解を深めようとしています。
2. 内田先生の基本書のようにケースを用いた記述方法が採用されています。
3. 2色刷り(笑) ← 余談ですが、2色刷りにするには、一定程度の販売量が予想できなければできません。端的に言えば「売れる」本しか2色刷りはできません。
尚、1冊で親族相続をカバーする本としては、他に内田貴先生の『民法IV』や、佐藤義彦・伊藤昌司・右近健男先生の『民法5 親族・相続 第2版補訂』(Sシリーズ)がありますが、どちらも内容の一部にやや特徴があるので、「無難」とは言い難いです。
もちろん、個人的な嗜好が合うのであれば、問題は無いと思いますが……。
■親族
大村敦志『家族法 第2版補訂版』(有斐閣、2004年)
最近のものとしては、大村先生の書かれた本書がお薦めです。
……が、内容がやや極め細やか過ぎるきらいがあります。
つまり、1つの論点について、様々な観点から丁寧な検討が為されているのですが、その分、論理の筋が見えにくくなっています。
また、大村先生の特徴なのですが、丁寧な検討を為される分、ご自分の見解を余りはっきりとは打ち出しません。
ですから、内田先生のように明快な答えを求められる方には本書は向かないのではないかと思われます。
尚、「家族法」というタイトルが付けられていますが、本書の内容は「親族」だけです。
■相続法
潮見佳男『相続法 第2版』(弘文堂、2005年)
相続法では本書がお薦めです。
相続法は、親族法と異なって財産法との距離がかなり短い分野です。
そのため、財産法とリンクした勉強が重要ですが、本書は債権法の大家である京大の潮見先生が書かれていますので、財産法とのリンクという点では非常に優れています。
そして、本書では、いわゆる「潮見語」はかなり抑えられており、分かりやすい文章が展開されています。
また、『プラクティス民法 債権総論』と同じく、本書でもケースを用いた説明が為されています。
潮見先生の文章が苦手、という方にはお薦めできませんが、そうでなければ、本書はかなりお薦めです。
『プラクティス』等と併せて使うと、財産法・相続法の理解が深まるのではないか、と思います。
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コメント
早速の紹介ありがとうございます。
一応潮見先生の相続法を所有しておりましたが、親族法の分野について、同じケース形式の本が見つからず探しておりました。
二宮先生の本を、見てみようと思います。
失礼します。
投稿: k | 2006年7月10日 (月) 21:05