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2006年8月 1日 (火)

【刑訴】 訴因変更についての覚書・その3

今日は、以前に述べた訴因変更について、 若干の補足。


既に述べたように、312条1項の「公訴事実の同一性」の意義については激しい争いがあるが、実務・有力説は、この文言について、 いわゆる非両立性という基準を定立している(検察実務では通説と言っても過言ではない)。

時間と紙幅の関係で詳細な説明はできないが(特に理由付けの部分の説明が若干長くなる)、この見解を極めて簡単に「答案風」 に論証すると、次のようになる。


では、本問で訴因変更が認められるか。


「公訴事実の同一性」(312条1項)の意義が、条文からでは明らかではないために問題となる。


この問題については争いあるものの、 実務では非両立性を基準とする見解が有力である。


そして、この見解によれば、 現訴因と新訴因とが同一の刑罰権の対象であり、二重処罰禁止(338条3号、339条5号参照)の観点から見て、 現訴因の犯罪事実と新訴因の犯罪事実を共に処罰することが許されない場合(法律上、非両立の場合)には訴因変更が許される。

 

つまり、 現訴因と新訴因とが実体法上1個の刑罰権の対象となっている場合には非両立性が認められ、訴因変更が許される。


ちなみに、参考文献としては下記のものが代表的であり、かつ、非常に分かりやすい。


佐藤文哉「公訴事実の同一性に関する非両立性の基準について」『河上和雄先生古希祝賀記念論文集』 (青林書院、2003年)251頁以下

 

酒巻匡「公訴の提起・追行と訴因(4)」法学教室302号64頁以下

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