【経済法】 お薦め基本書
今日は、経済法のお薦め基本書について。
根岸哲・舟田正之『独占禁止法概説 第3版』 (有斐閣、 2006年)
本書は、経済法の基本書の中で最もスタンダードな1冊と言っても過言ではない。
すなわち、本書は、根岸先生・舟田先生という両大家が書かれた基本書で、現在の判例・通説に則った記述――と言うか、 両先生の見解の多くが判例・通説になっている――が為されている。
従って、経済法を本格的に勉強するのであれば必携である。
但し、記述が内容的にも視覚的にも比較的簡潔、かつ、淡々としている。
そのため、講義の教科書用ならともかく、初学者の独学用にはあまり適していないと思われる。
少なくともこれ1冊で独学するのは、あまりお薦めできない。
川濱昇・瀬領真悟・泉水文雄・和久井理子 『ベーシック経済法 第2版』(有斐閣、 平成18年)
初学者が最初に購入するのであれば、原則として本書を薦める(例外は東大で白石先生の経済法の講義を受講する場合)。
本書は、京大の川濱先生をはじめとする経済法の若手有力学者による共著で、経済法を経済学的観点から分かりやすく教えるという点に主眼が置かれている。
ただ、そうは言っても、本書の内容の水準が低いという訳ではない。
むしろ、本書では、従来の見解が正確に説明されている上、特に重要な判例・審決についてはだいたい言及されている (但し、掲載判例・審決数は少ない)。
内容的には、大半が伝統的な学説に従った記述となっている。
経済法を勉強するのであれば、まず本書から始め、その後、根岸・舟田『独占禁止法概説 第3版』に入るという流れが良いかもしれない。
また、上述のように、本書は経済的観点からの記述が多い。
従って、法科大学院などに進学される経済学部出身の方は、特に、本書から経済法の勉強を始められた方が良いかもしれない。
白石忠志『独禁法講義 第3版』 (有斐閣、 2005年)
本書は東大の白石先生が書かれたもので、2005年の出版だが、平成17年改正には対応している。
本書の特色は2点ある。
第1の特色は、教える工夫が充分に為されているという点である。
上記の『ベーシック経済法』も教える工夫がふんだんに為されている基本書であるが、本書は、更に多くの工夫が為されている。
例えば、本書の内容の順番(構成)は、 理解のしやすさという点に主眼が置かれたものとなっており、パンデクテン方式の記述となっている。
これは、法律の素養のある者にとっては非常に分かりやすい構成である。
また、身近な例を基にした説明・比喩が多用されており(サッカーの例が多い)、この点でも教える工夫が凝らされている。
第2の特色は、白石説が展開されているという点である。
白石先生は、形式的・実質的に、従来の伝統的見解と異なる自説を多く主張されており、 本書では白石説が説得的に分かりやすく展開されている。
従って、従来の伝統的な見解を勉強する目的には本書は向かない。本書は、伝統的見解を一通り読んだ上で手に取るべき本だと思われる。
また、従来の伝統的見解を読んだ後に読めば、自分の中の経済法体系がすっきりと整理されるのではないだろうか。白石先生の分類・ 分析は非常にシャープである。
ただ、内容とは関係無いことだが、紙質が余り良くない。画用紙のような紙を使っているため、 鉛筆やペンでラインをひく際に違和感を感じるかもしれない。
【追記】
白石先生は、その後、体系書も出版された。
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