【民法】履行補助者責任と報償責任・過失責任原理について・その2
今回も、前回と同じく 履行補助者責任と報償責任・過失責任原理について一言。
前回も述べたように、履行補助者責任とは、一般的には、
「履行補助者の行為によって債務不履行が生じた場合に、 債務者が自己の行為により債務に不履行が生じた場合と同様に負わされる損害賠償責任」
のことを言う。
そして、伝統的見解によれば、この履行補助者責任の内容は更に限定され、
「履行補助者の故意・過失は、信義則上、債務者自身の故意・過失と同視される」
という命題に収斂することになる。
つまり、伝統的見解が主張する履行補助者責任は、信義則に基づく自己責任 (過失責任)拡大原理なのである。
即ち、伝統的見解によれば、履行補助者責任は「債務者が本来自分が負担している債務を履行するために 履行補助者を使用した以上、その債務者が、履行補助者の過失を自分自身の過失ではないと主張することは信義に反する」 という判断を基礎に置く考え方なのである。
従って、伝統的見解によれば、履行補助者責任は過失責任原理を基礎におく責任ということになる。
他方、報償責任原理、危険責任原理は、 無過失責任原理の一種である。
従って、素直に考えれば、無過失責任の一種である報償責任原理・ 危険責任原理を過失責任を基礎にする履行補助者責任の根拠とすることはできないはずである。
少なくとも、履行補助者責任の根拠について報償責任原理・危険責任原理を維持しつつ、「履行補助者の故意・過失は、信義則上、 債務者自身の故意・過失と同視される」という伝統的見解の命題を採用するのであれば、両者の架け橋となる論理を構築する必要がある。
他方、伝統的見解の命題を採用しないのであれば、履行補助者責任を債務不履行体系のどの部分に組み込むのか、 という問題を処理しなければならないことになる。
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