【余談】 法律学の勉強の仕方について、ほんの一言。
今日は、法律学の勉強の仕方について、ほんの一言。
よく言われることですが、法律学の勉強で重要なのは、暗記ではなく理解です。
勿論、暗記が不要という訳ではありません。
むしろ、以前も申し上げたように、法律学の勉強では暗記は必要不可欠です。
ですから、暗記するという無味乾燥な作業は、法律学の勉強では必ず通過しなければならない作業と言えます。
ですが、暗記にだけ走ってしまっては本末転倒です。
暗記は、法律の勉強・解釈・適用の必要条件ではありますが、十分条件ではありません。
では、「理解」するためには、どのような勉強をすれば良いのでしょうか?
■松岡久和先生のご指導
京都大学の松岡先生は、ご自身のサイトで次のように述べられています。
http://www.matsuoka.law.kyoto-u.ac.jp/SemiMaterials/how2ans.htm
法律学の勉強の「出発点は制度やそれを構成する基本概念についての正確な理解です」。
「私の友人のなかに、非常に頭が良く論理的な構成力があるのに司法試験に合格するのにだいぶん寄り道をした者がいます。彼は、基本概念の正確な理解を欠いたままで理屈を立てていたことが遠回りの原因だった。7回生の頃それに気付いた後は早かった、としみじみと述べていました。抽象的な定義だけを覚えるのは苦痛ですし応用力がつきません。基本事例・典型事例に定義を当てはめて考えてみる経験によって、自然と正確な定義が頭に定着するようになります」。
■我妻栄先生のご指導
以前もご紹介した我妻榮(遠藤浩補訂)『全訂第一版 民法案内1(私法の道しるべ)』(一粒社、1991年)の27頁以下で、我妻先生は次のように述べられています。
「理解して読むとは、まず書いてあることはどういう意味かを理解し、つぎに、何故そんなことをいうのか、を考えることである」(太字部分は原文では傍点部)。
「教科書を読む最初から……深入りすることは、不可能であり、深入りしようとすれば、かえってわけがわからなくなる。典型的な場合を考えながら一応理解せよというのである」(太字部分は原文では傍点部)。
その例として、我妻先生は、「荷車の上に重い荷物を下手に積みあげて引いていったので、荷物がころげ落ちて往来の人の自転車をこわした」という設例を自分で考え、不法行為の要件を充足するか、1つ1つ丁寧に検討せよ、と述べられています。
「要するに、定義的な説明は、最も典型的な場合については、例外も疑問もなしに、明瞭に適用されるに相違ないから、これを自分の頭で考えて納得するようにしなければならない。納得のゆく例を考え出せない限り、一応の理解をしたのではないから、考え続けねばならない。それをやめて、『不法行為とは……』と暗記しては、ダメというのである」。
以上、両先生のご説明・ご指導を引用致しました。
古来より、急がば回れ、と言います。
慌てなくて良いですから、ゆっくりと、正確に勉強して欲しいと思います。
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