【会社法】 株券発行前の株式譲渡について・その2
今回も、前回と同じく、 株券発行前の株式譲渡について、一言。
■問題の所在
問題の所在を簡単に再言すると以下の2点にまとめることができる。
1. 会社法128条2項に言う「株券発行会社に対し、その効力を生じない」とはどのような意味か? 「対抗することができない」 (=会社が当該譲渡を認めることはできる)という意味であると解してよいのか?
2. 最高裁は、 最判昭和33年10月24日民集12巻14号3194頁を、最大判昭和47年11月8日民集26巻9号1489頁で変更しているが、結局、 現在の最高裁は、会社法128条2項の趣旨をどのように考えているのか?
そして、その趣旨からすれば、「株券発行会社に対し、 その効力を生じない」という文言の意義はどう考えるのが素直か?
■47年判決の 「法意」
前回述べたように、最大判昭和47年11月8日は、旧商法204条2項(会社法128条2項)について次のように判示した。
「商法204条2項の法意……は、 株式会社が株券を遅滞なく発行することを前提とし、 その発行が円滑かつ正確に行なわれるようにするために、 会社に対する関係において株券発行前における株式譲渡の効力を否定する趣旨と解すべき」
そして、旧商法204条2項の趣旨をこのように解するのであれば、 『最高裁判所判例解説 民事篇 昭和47年度』(法曹会、 昭和49年)572頁や、葉玉匡美編著『新・ 会社法100問』(ダイヤモンド社、 2005年)133頁とは異なり、 会社が当該譲受人を株主と認めることは許されるはずではないのか? (河本一郎『現代会社法<新訂第9版>』〔商事法務、 平成16年〕158頁、黒沼悦郎「株券発行前の株式譲渡」『会社法判例百選[第6版]』 26頁など参照)。
勿論、趣旨とは別の理由で会社による譲渡承認を否定する、または疑問視する論理もあり得る。
例えば、旧商法204条2項(会社法128条2項) の趣旨について47年判決と同様に考えるとしても、株券未発行の段階では株券の交付も為されていない以上、 株式は譲受人ではなく譲渡人のもとに留まっているはずである。
つまり、株券未発行の段階では、当事者間の株式譲渡契約は債権的な効力しか有しておらず、譲受人は未だ株主ではないのである。
そして、そのような非株主=譲受人を会社が株主として扱うことは背理である。
従って、47年判決のように考えるにしても、「当事者間でいかに譲渡の効力が発生するのか」という問題をクリアしなければならず (以上につき、江頭憲治郎『株式会社・有限会社法〔第4版〕』〔有斐閣、 2005年〕208頁注23参照)、もし、この問題をクリアできないのであれば、 会社が当該譲受人を株主と認めることはできないだろう。
……言いたいことは上記のとおりだが、いつも以上にまとまりのない記事になってしまった。駄文失礼。
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