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2006年9月12日 (火)

【民法】 幾つかの断片的メモ

先程、民法94条2項類推適用について記事を書いていて思い出したことが幾つかあったので、 それらを簡単に述べる。

荒っぽい欠き方で恐縮だが、あくまでメモ程度のものなのでご寛恕頂ければ幸いである。

 

■その1

原始取得の例として時効取得が挙げられることがある。

 

しかし、「時効取得が原始取得だからといって、 制限物権付きの不動産の所有権について時効取得が完成したとき、その制限物権が消滅する、というのは当然ではない」 (道垣内弘人「民法★かゆいところ 時効取得が原始取得であること」法教302号53頁〔2005年〕 )。

 

詳細は、上記の道垣内先生のご論文を参照されたい。

 

 

■その2

以下の事例を解いてみて頂きたい。

 

Y ―― A ―― B ―― X

 

即ち、AB間で通謀が為され、Aの取得する不動産がBに仮装譲渡された。登記はBのもとにある。

そして、Xは、当該不動産はBの所有物であると善意無過失で信じ、Bから当該不動産を取得した。

ところが、BX間の譲渡後、かつ、 XがBから登記を取得する前にYがAから当該不動産の所有権を取得した。

XY間の法律関係を述べよ。

 

この問題については様々な考え方があり得るが、最高裁は、 XY間の問題は対抗問題であるとする最判昭和42年10月31日民集21巻8号2232頁)。

 

そして、司法研修所は、この判例に基づいて次のように主張する。

即ち、司法研修所は、民法94条2項による権利変動過程は法定承継取得である、と主張するのである。

 

上記設例に即して説明しよう。

上記設例では、Xは、Bから善意無過失で不動産を取得した時点で民法94条2項の適用を受ける訳だが、 この場合の実体的な権利変動過程については2つの考え方がある。

 

第1の考え方は、 AからXに直接所有権が移転するという考え方である。そして、司法研修所が主張する見解はこれである。

従って、この考え方によると、上記設例では、「A → X」という物権変動と、「A → Y」 という物権変動が存在することになる。

 

これは典型的な二重譲渡であるから、177条で処理されることになる。つまり、 最高裁の考え方と合致する。

 

第2の考え方は、 第三者Xとの関係ではAB間の仮装譲渡が有効に扱われる、という考え方である。

従って、この考え方によると、上記設例では 「A → B → X」という物権変動と、「A → Y」という物権変動が存在することになる。

 

が、この考え方を素朴に敷衍すると、Bが既にYより先に登記を取得している以上、 XY間は対抗問題にならない。つまり、最高裁の考え方と合致しない。

 

よって、素朴に考える限りでは、最高裁の考え方を説明することができない。

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