【刑訴】 違法収集証拠排除法則の基礎?
今日は、違法収集証拠排除法則の基礎、というか注意すべき点について、簡単に一言。
■定義
違法収集証拠排除法則とは、 刑事訴訟を規律する法規に違反して収集された証拠について証拠能力を否定し、訴訟から排除するルールを言う。
■最判昭和53年9月7日刑集32巻6号1672頁
周知のとおり、この違法収集証拠排除法則は判例によって定立されたものであり、刑訴法上、規定は存在しない。
そして、リーディング・ケースである最判昭和53年9月7日刑集32巻6号1672頁は次のように述べている。
「事案の真相の究明も、個人の基本的人権の保障を全うしつつ、 適正な手続のもとでされなければならないものであり、ことに憲法35条が、憲法33条の場合及び令状による場合を除き、住所の不可侵、 捜索及び押収を受けることのない権利を保障し、これを受けて刑訴法が捜索及び押収等につき厳格な規定を設けていること、また、 憲法31条が法の適正な手続を保障していること等にかんがみると、 証拠物の押収等の手続に憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、 これを証拠として許容することが、 将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、 その証拠能力は否定されるものと解すべきである」。
■注意点
注意すべき第1点は、この規範である。
即ち、最高裁の定立した規範、およびその後の一連の最高裁判決によれば、違法収集証拠排除法則が適用される「違法」は、原則として令状が問題となるものである必要がある (但し、 例外的な事案もある) 。
つまり、証拠の収集過程に令状と無関係の違法事由があったとしても、その違法事由は、 違法収集証拠排除法則の適用を原則として基礎付けることはできないのである(尚、当然のことだが、学説では異論はあり得る)。
この関係で問題になるのは、おとり捜査である。
第2点は、このようにして定立された違法収集証拠排除法則は、 証拠物に対する適用を前提としているという点である。
つまり、例えば、自白の収集過程に違法がある場合に違法収集証拠排除法則が適用されるか、 という問題に関する最高裁判決はまだ出ていないのである。
但し、下級審裁判例、および学説では、前掲・53年判決の論理は自白などにも妥当するという見解が有力であり、恐らく、 最高裁もこのような考え方に立っているのではないか、と考えられる。
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