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2006年9月 4日 (月)

【刑法】 トラックバックと威力業務妨害罪

今日は、威力業務妨害罪とトラックバックについて一言。

 

某法律系ブログを拝読していたところ、次のような一文がブログの冒頭に示されていた。

 

本ブログに法律とは関係ないトラックバック(特に風俗関係のトラックバック)を張ることは、威力業務妨害罪(刑法234条)に該当します

 

本ブログのような「過疎」ブログですら、時折、業者によるトラックバックが為される。人気のあるブログともなれば、 業者のトラックバック数も多く、管理が大変であろう。

従って、このような警告をする意図は充分理解できる。拙稿も、上記警告にケチをつけるつもりは毛頭無い。

 

ただ。

 

あるブログに、そのブログと無関係の商業的トラックバックを張ると、本当に威力業務妨害罪が成立するのだろうかか?  少なくとも構成要件には該当するのだろうか?

 

■条文

刑法233条 【信用毀損及び業務妨害】
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、 人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法234条 【威力業務妨害】
威力を用いて人の業務を妨害した者も、 前条の例による。

 

■判例の整理

威力業務妨害罪については幾つかの論点があるが、判例の立場を簡単にまとめると、大要、以下のようになるものと考えられる。

1. 本罪は抽象的危険犯である(但し、 学説では侵害犯説が有力)。

 

2. 本罪の「業務」とは、社会的に平穏に営まれている事務を指す。

3. 本罪の「業務」に公務が含まれるか否かについては争いがあり、判例は公務を「業務」 に含めていく傾向にある(「常に含めている」という断定はし辛い)。

 

4. 「威力」とは、人の意思を制圧するに足る勢力を言う。

5. ただ、実際には妨害手段が公然に行われる場合が威力業務妨害罪、 不可視的に行われる場合が偽計業務妨害罪、という処理が為される傾向にある(最決昭和59年3月23日刑集38巻5号2030頁など

 

6. 通説は、本罪の成立には業務の外面的な混乱が必要とするが、 いわゆるマジックホン事件で最高裁は本罪の成立を肯定しており(最決昭和59年4月27日刑集38巻6号2584頁)、通説と全く同様に考えているとは言い難い。

 

■考察

結論から言えば、成立する可能性は充分ありそうである。

勿論、犯人の特定、故意の立証、そもそもこの程度の違法性で検察官が起訴してくれるか、など、現実的な成立にはかなりの困難を伴うが、 理論的には――少なくとも客観的構成要件該当性は――充分ありうると考えられる。

 

とすれば、現実的には本罪の成立は困難であるにせよ、 警告の基礎となる程度の成立可能性は十分にあるのだろう

 

だからこそ、私が拝読したブログの著者の方も「成立します」ではなく、「該当します」と述べるに留めているのだろう。

 

 

……目新しい発見もなく、下らない記事になってしまった。駄文失礼。やれやれ。

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