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2006年9月17日 (日)

【民法】 種類債権において特定が為されると?

今日は、以前にも若干説明したが特定(401条2項) について、簡単に一言。

 

■条文

401条 【種類債権】
1項

債権の目的物を種類のみで指定した場合において、 法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。

2項
前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、 又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。

 

■定義

特定とは、種類債権において給付目的物を具体的に確定することを言う(奥田昌道『債権総論〔増補版〕』〔悠々社、1992年〕42頁)。

 

■説明

奥田先生の特定の定義からも分かるように、特定(古い文献では 「集中」という言葉が用いられることもある)は、種類債権において必要とされる行為である。

 

そして、特定の主たる効果は給付危険からの解放であり、 副次的に534条2項によって対価危険からの解放という効果も生じる(拙稿 「特定と弁済の提供・その1」を参照)。

 

ところで、初学者によくありがちな誤解として

 

「特定がされると、種類債権は特定物債権になる」

 

というものがある。

 

しかし、これは不正確である。

 

即ち、「種類債権の特定により、 種類債権が特定物債権に全面的に変わってしまうわけではない。『かつて種類債権であった』という性質が、 特定後の債権関係に以前として影響を及ぼす。変更権の問題が、これである」(潮見佳男『債権総論〔第2版〕I』〔信山社、2003年〕 59頁以下

 

つまり、確かに、種類債権で特定が為されると、それ以後は、多くの場面で特定物債権と同様の処理が為される。

 

しかし、種類債権が特定物債権に全面的に変わってしまうとすると、判例・学説で認めらている変更権や、 534条2項説明ができなくなってしまうのである。

 

従って、正確には、特定が為されると、種類債権は特定物債権と同様の法的処理が為されることが多い、というべきだろう。

 

 

■参考文献

上記のものの他に、奥田昌道編『新版注釈民法(10) I 債権(1)債権の目的・効力(1)』(有斐閣、平成15年)299頁以下〔金山正信・直樹〕。 簡潔にして要を得た説明である。

 

 

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