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2006年10月25日 (水)

【民法】 ○○能力

今日は質問を受けたので、権利能力、意思能力、行為能力、事理弁識能力などについて、一言。

 

■権利能力・意思能力・行為能力

権利能力とは、「権利義務の主体となる資格」 (山本敬三『民法講義 I 』〔有斐閣、2005年〕33頁)を言う。

 

意思能力とは、「自分のしている行為の法的意味―― そのような行為をすればどうなるか――を理解する能力」を言う(前掲・山本39頁)。

 

行為能力とは、 「法律行為を自分一人で確定的に有効におこなうことのできる資格」を言う(佐久間毅『民法の基礎1  〔第2版〕』〔有斐閣、2005年〕84頁)。

 

 

そして、これら3つの能力の関係については、内田貴先生の『民法 I  第3版』(東京大学出版会、 2005年)101頁以下に非常に分かりやすい説明が為されている。

 

従って、屋上屋を架す必要は無いのだが、敢えて比喩的に説明すれば、権利能力は車体、 意思能力はエンジンであり、行為能力はハンドルである。

 

取引社会、または法廷というカーレースに出場するためには、権利能力という車体が必要である。

 

そして、ゴール目指して車を進めるためには意思能力というエンジンが必要である。

エンジンが無い場合には、カーレース場に人力で入ることはできても(出産によって社会に登場しても)、自らの力で前に進むことはできない。

 

エンジンを積んでいない車体は、常に車を後押ししてくれる存在が必要なのである。

 

また、いくら車体とエンジンがあっても、ハンドルが無ければ車をコントロールすることはできない。

ゴールまで無事にたどり着くためには行為能力というハンドルが必要なのである。

 

行為能力というハンドルが無い場合には、誰か他人によって方向転換をして貰う必要がある。

 

 

■事理弁識能力

以上、3つの能力と異なり、定義が一致していないのが事理弁識能力である。

これは、上記の3つの能力の他に事理弁識能力という概念を用いることの意味のべが疑問視されていることに基づく。

 

とりあえず、定義を述べる。

 

「事理を弁識する能力」という文言が登場するのは7条以下であるが……

 

「ここでいう事理を弁識する能力(事理弁識能力)とは、 法律行為の利害得失を判断する能力、すなわち、法律行為が自己にとって利益か不利益かを判断する能力という意味での判断能力と考えられる」。

 

但し、事理弁識能力は「一般には意思能力と同義で考えられている(通説)が、ここでは自己の行為の結果発生する権利義務関係を認識しうるだけでなく、 その利害得失を正常に判断できる意味を含むのであるから、理論的には区別すべであろう」(以上につき、 遠藤浩ほか『民法(1) 〔第4版増補補訂2版〕 有斐閣双書』〔有斐閣、2002年〕49頁)。

 

とされている。

 

しかし、現在では、意思能力と事理弁識能力の区別は曖昧である。

例えば、佐久間先生は、意思能力とは「自己の行為の利害得失を判断する知的能力」 であるとされている(前掲・佐久間80頁)。

 

これは、上記双書の記述からすれば、事理弁識能力の定義に当たるものである。

 

 

尚、これらの諸能力について、より深く学びたい場合には、中舎寛樹「意思能力・行為能力・責任能力・事理弁識能力」磯村保ほか 『民法トライアル教室』(有斐閣、1999年)1頁以下がお薦めである。

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