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2006年10月 7日 (土)

【刑法】 包括一罪と観念的競合について

今日は、以前にも若干説明したことがあるが包括一罪と観念的競合について、一言。

 

罪数論の概観については、上記拙稿を参照して頂きたい。

今回は、それを前提として簡単な説明をしたいと思う。

 

■有力説による説明

包括一罪について平野龍一先生門下の先生方は、概ね、次のように説明する(「有力説」と項目タイトルを付けたが、現在では、この考え方をもって多数説と言って良いかもしれない)。

ここでは、東大の山口先生のご著書から引用する。

 

包括一罪とは、 「複数の法益侵害事実が存在するが、1つの罰条の適用によりそれを包括的に評価しうる場合」を言う (山口厚 『刑法総論』〔有斐閣、平成14年〕315頁)。     

 

そして、包括一罪は「①複数の法益侵害が惹起されたが、 主たる法益侵害の惹起に、付随する従たる法益侵害を含めて評価しうるか、あるいは、同一の法益侵害としてまとめて評価しうる場合 (法益侵害惹起の一体性)であって、②1個の行為又はそれに準ずる場合(行為の一体性)に認められる」(前掲・山口315頁)。

 

このうち、「主たる法益侵害の惹起に、付随する従たる法益侵害を含めて評価しうる」場合を特に吸収一罪と言い、「同一の法益侵害としてまとめて評価しうる場合」 を狭義の包括一罪と言う。

 

 

■問題の所在

しかし、平野先生ご自身が述べられているように、実は、 「包括一罪という概念の使い方は、学説でも必ずしも一致しているわけではない」平野龍一『刑法概説』〔東京大学出版会、1977年〕134頁)。

 

と言うのも、現行刑法は、戦前の刑法のように連続犯の規定を置いていないため……

 

数個の法益侵害行為が「現在でも一罪となるかどうか、また、 どのような要件で一罪が認められるかについては、全て解釈に委ねられることになった」 (虫明満 「包括的一罪」阿部純二ほか編『刑法基本講座 〈第4巻〉』〔法学書院、1992年〕298頁)     

 

……からである。

そのため、学説では包括一罪の定義や、具体的内容について争いがあるが、最大公約数的な定義を述べれば、

 

包括一罪とは 「数個の構成要件に該当する事実が、全体として一罪となる場合」(前掲・虫明298頁

 

であろう。

 

ただ、上記の定義は、やはり最大公約数的な定義であって、その範囲が明確ではない。

そのため、上記の定義に基づいて議論を進めたり、答案を書いたりすると、明後日の方向に行ってしまう危険性もある。

 

例えば、以下の各場合に成立する法益侵害事実は、一般に、いかなる構成要件に該当し、いかなる罪数関係にあると評価されるだろうか?

 

1. 1発の弾丸で数人を殺害した場合

 

2. 1発の弾丸で1人に対し数個の傷害を負わせた場合(散弾銃などをイメージして頂きたい

 

. 1発の弾丸で1人を殺害すると同時に同人の衣服を損壊した場合

 

結論から言えば、一般的には次のように評価されるものと考えられる(尚、観念的競合とは、1個の行為が複数の構成要件を充足する場合を言う。 この場合の構成要件は異なるものでも良い)。

 

1. 殺人罪の観念的競合

 

2. 殺人罪の包括一罪(狭義の包括一罪

 

3. 殺人罪の包括一罪(吸収一罪

 

 

そして、包括一罪と観念的競合のメルクマールは、被害法益の単一性にある。

 

即ち、「1個の行為で同一構成要件を数回充足した場合、 違法内容の一体性が認められれば包括一罪となるか、そのためには被害法益の単一性が必要である。 すなわち、一般の刑罰法規は1個の法益侵害を念頭においているので、 数個の法益が侵害されたときは1個の罰条による1回的評価は不可能となる」のである(前掲・虫明304頁

 

 

上記の説明は基礎的なことであって、目新しいものではない。

「何でこんなことを長々と書いているんだ」と思われた方も少なくないと思われる。

 

しかし、白石先生が仰っているように「『基礎』とは、『初心者でないならなおざりにしてよいこと』ではない」白石忠志『独禁法講義〔第3版〕』〔有斐閣、平成17年〕20頁)。

 

本稿が復習の一助になれば幸いである。

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コメント

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