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2006年11月15日 (水)

【民法】 94条2項類推適用について若干の補足・その4

今日は質問を受けた(& 随分前の記事の続編をまだ書いていなかった。他にもそういう記事はあるが……)ので、 民法94条2項類推適用について、一言。

 

 

■これまでの拙稿

【民法】 94条2項類推適用について若干の補足・その1
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_bafd.html

【民法】 94条2項類推適用について若干の補足・その2
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_a303.html

【民法】 94条2項類推適用について若干の補足・ その3
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_d6d1.html

【民法】 拙稿の整理
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_bf1c.html

 

 

 

■説明

以前の拙稿で述べたように、94条2項類推適用+110条「法意」という構成の妥当性(※)を考えると、 問題は結局、94条2項類推適用法理における帰責性とは何か?という点に行き着くことになる。

 

 判例は、いわゆる意思外形非対応型の事案において、 110条の法意を用いることによって外形に対する本人の帰責性の低さを補っている。しかし、110条の法意を用いても、 本人の帰責性が低いということに変わりは無いという問題がある。

 

 

この問題について、学説は次のように説明する。

 

そもそも、 「民法94条2項類推適用法理は、権利者が登記名義人に権利を与えた場合と同様の結果を認めようとするものである」。

 

そのために、 権利を与えたのと同様に解してよい権利者の帰責性は何であるかが問われ、 権利者がその意思に基づいて外形を作出したこと、もしくは、 その作出に事前または事後に同意(承認) を与えたことを要するとされてきたのである」(以上につき、佐久間毅 「民法94条2項および民法110条の類推適用による不動産登記名義に対する正当な信頼の保護」NBL834号20頁〔2006年〕。 太字は引用者)。

 

 

つまり、 虚偽の外形を作出することについての意思こそが、94条2項類推適用における帰責性なのである。

 

何故ならば、94条2項は意思表示に関する規定だからである。

以下、敷衍する。

 

そもそも、虚偽表示とは、効果意思が無いにも拘わらず効果意思があるかのような表示行為をすることである。

 

そこで本来的に非難対象とされているもの、即ち、帰責性とは、 効果意思があるかのような表示行為をすることに対する自己決定である。

 

 

ところで、類推適用は、本来適用の場合から乖離することはできない。

本来適用から乖離した適用は類推適用ではない。それは、立法行為である。

 

 

換言すれば、類推適用は本来適用とその本質を異にすることはできないのである。

 

そして、本質とは、「それ無くしては、その概念を成立させることができない要素」のことである。

 

 

これを94条2項の帰責性に当てはめるとどうなるか?

 

「帰責性=効果意思があるかのような表示行為をすることに対する自己決定」という命題の中で、必須の要素は何か?

 

それは、自己決定、即ち、意思である。

 

従って、意思こそが94条2項類推適用における帰責性なのである

 

 

以上をまとめると、以下のような論理になる。

 

1. 94条2項本来適用における帰責性とは、 効果意思があるかのような表示行為をすることに対する自己決定である(ちなみに、「虚偽表示」という意思表示がある訳ではない)。

 

2. 類推適用は、本来適用とその本質を異にすることはできない。

 

3. 94条2項本来適用における帰責性の本質は、自己決定=意思である。

 

4. 従って、94条2項類推適用における帰責性とは、意思である。

 

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