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2006年11月27日 (月)

【余談】 羽生善治著『決断力』について

私は、基本的には購入した本に3色ボールペンで線を引いています。

そして、何回も読むに値する本、読みたい本については、気が向いたときに再読するようにしています。

 

最近は、以前もご紹介致しました羽生善治さんの『決断力』角川書店、角川oneテーマ21・C-95、2005年)を再読しておりました。

 

 

本書は、全体で5つの章から構成されています。

 

第1章 勝機は誰にもある
第2章 直感の七割は正しい
第3章 勝負に生かす「集中力」
第4章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報
第5章 才能とは、継続できる情熱である

 

本書では基本的には将棋に関して羽生さんが考えていること、 思っていることをベースとした主張・理論が展開されています。

 

と言っても、将棋の世界でだけ通用する話や将棋理論が書いてあるわけではありません。

むしろ、そういった記述はかなり少なく、羽生さんの記述は、自己の経験をその鋭い観察力で分析することによって、 将棋理論の背景にある普遍的な理論にまで到達しています。

 

 

 

 

「しかし、 判断のための情報が増えるほど正しい決断ができるようになるかというと、必ずしもそうはいかない。私はそこに将棋の面白さの1つがあると思っているが、 経験によって考える材料が増えると、逆に迷ったり、心配したり、怖いという気持ちが働き、思考の迷路にはまってしまう」 (56頁)    

 

 

 

 

 

「決断とリスクはワンセットである。日本の社会は、 同質社会ということもあって、このバランスが悪いと思う。リスクを背負わない人がいる一方で、リスクだけ負わされている人がいる。 決断を下さないほうが減点がないから決断を下せる人が生まれてこなくなるのではないか。目標があってこその決断である。 自己責任という言葉を最近よく聞くが、リスクを背負って決断を下せる人が育たないと、社会も企業も現状の打破にはつながらないであろう」 (71頁)  

 

 

しかも、非常に含蓄があり、ビジネスや勉強など様々なことに応用が利くメッセージが多々含まれています。

 

 

 

 

「人間は生理的に同じマックスの集中力を維持するのは不可能だ」  

 

「集中力は、人に教えてもらったり、 聞いて身につくものではない。勝負どころでの集中力を発揮するには、集中できる環境を自らつくり出すことこそが大切だと思っている」 (以上につき94頁

 

 

 

 

 

「将棋にかぎらず、勝負の世界では、 たとえ失敗しても次のミスを防ぐことが大事だ。かっとなったら、それはできない。 自分の感情をコントロールすることは将棋の実力にもつながるのだ」(116頁)  

 

 

 

 

 

「つまり、情報をいくら分類、整理しても、 どこが問題かをしっかりとらえないと正しく分析できない。さらにいうなら、山ほどある情報から自分に必要な情報を得るには、『選ぶ』 より『いかに捨てるか』のほうが重要なのである」(129頁)  

 

このように、自己が所属する世界や業界の事項についての理解・ 思考を深めた結果、普遍的に妥当するメッセージを発信しているという点は、 『イチロー 262のメッセージ』ぴあ、2005年) にも通ずるものがあります。

 

特に、「上達」のプロセスが存在することを明確に意識し、 それを実践していこうとする強い意欲がある点(153頁)もイチロー選手と同じです。

 

また、その「上達」のプロセスにおいては、まず「真似」から始め、次にその真似した過程を「理解」 せよ、と指摘しています(183頁)。

これは法学の学習の際に度々指導される勉強法ですし、また、斉藤孝先生も「まねる力」 というキーワードで同内容の理論を展開されています。

 

先人が開発した既存の体系を、まずは「使える」ようにすれば良いという考え方は、特に子供の教育では非常に大事だと思います。

 

何故ならば、子供は「使える」という点に喜びを見出し、喜びを感じる事項については反復するからです。

 

そして、「読書百遍義自ずから見る」ではありませんが、反復して使っていると、当該プロセスを「無意識のうちに意識」するようになり、 やがて「理解」に至るはずです。

 

 

上記のように、本書には、羽生善治という稀代の天才が自ら学んだ経験を自ら分析して得た情報が満載です。

 

一般論として、他人から物事を学ぶことは自己の視野を広げるために重要ですし、効果的です。

そして、その教えを乞う他人が羽生さんのような天才であれば、その視野拡大効果はかなり大きいでしょう。

 

本書については、関西の某大手事務所のパートナー弁護士の先生が強く推薦していますが、再読して、 改めてその推薦の理由が分かりました。

 

羽生善治 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%BD%E7%94%9F%E5%96%84%E6%B2%BB

 

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