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2006年11月13日 (月)

【余談】 ネット上での議論について

ふぉーりん・あとにーの憂鬱: 異種格闘技戦の文法
http://www.ny47th.com/fallin_attorney/archives/2006/11/12-151321.php

 

47th先生の記事を拝読して、ふと、木下是雄先生の名著 (※)『理科系の作文技術』中公新書624、 中央公論新社、1981年) の一文を思い出しました。

 

 

「仕事の文書にはそれぞれの役割があり、機能がある」

 

 

「自明のことかもしれないが、初心の執筆者にとっては、 自分の書こうとする文書の役割を確認することが第一の前提である」

 

 

「多少は書きなれた人も、筆をとる前に、 また書き上げたものを読みかえす前に、いったい読者はこの文書に何を期待しているはずか、と一瞬、 反省してみることを進める」 (以上につき同書14~15頁

 

※ 本書は、 「理解系の」というタイトルが付されていますが、文系の方にとっても大変有益な内容を含んでいるものだと思います。 文章を書く際に考慮すべき事項が、はっきりとしたシンプルな命題として提示されています。

 

木下先生が述べられているように、多くの場合、仕事で用いる文書が対象としている読者は、一定程度、予測することが可能です。

 

つまり、読者が共有している知識を一定程度、予測することができます。

 

また、本ブログのように辺鄙なブログ、しかも内容が偏っているブログの場合も、同様に読者層を一定程度、予測することができます。

 

ですが、47th先生のブログのように人気のあるブログだと、読者層を予測することが困難になります。

そのため、読者全般にとって「分かりやすい」文章を「読むに耐える」分量で書こうと思うと、どうしても内容が薄くなってしまいます。

 

また、47th先生がご指摘されているように、筆者が有している背景知識を読者が必ずしも有しているとは限らないために、 筆者が意図していなかった部分で議論が発生・進行してしまったり、「開かずの扉」・「禁断の果実」 とされていた部分に議論が及んでしまう可能性があります。

 

そして、このような状況を回避する端的な方法は、読者全般にとって 「分かりやすい」文章を書くという方針を放棄することです

 

つまり、このような状況を回避したいのであれば――傲慢な表現で恐縮ですが――、 自己が語りかけたい読者だけを想定した文章を作成すれば良い、と思います

 

私は、ネット上で文章を公開するということ、イコール、「異種格闘技戦」を望んでいるということ、ではないと思うのです。

 

勿論、「異種格闘技戦」を望む場合もあるでしょうし、それは知的にスリリングかもしれません。

 

ですが、47th先生が仰っているように、議論の決着をつけるアンパイアは存在しません(勿論、現実社会でも議論にアンパイアが存在することは滅多にありませんが)。

 

そして、アンパイアが存在しない状況での紛糾を回避したいと思うのであれば、はじめからリングに上がらなければ良いだけです。

 

そもそも、知の「異種格闘技戦」を行い、そこでの対戦を自分、 および自己が所属する集団にフィードバックするためには、議論の決着に拘泥するのではなく、 議論のプロセスそのものを正確に吟味する「眼力」が必要です

 

アンパイアは存在しないのです。議論に明快に決着がつくことはほとんどありません。

それにも拘わらず、人は――特にネット上では――勝敗に拘る傾向にあります。

 

従いまして、知の「異種格闘技戦」を行い、何かを得ようと思うのであれば、議論のプロセスから「利益」 をあげることができるシステムを自らの中に構築しておく必要があると思います。

 

しかし、たとえ、このような「眼力」、「システム」が自らに備わっているとしても、実際にネット上での議論から「利益」 を得られるかどうかは甚だ不安定です。

 

良質なコメンテーターが存在すれば可能ですが、コメンテーターはまさしく玉石混交です。

玉に会うことはあまりありません。このようなことを述べている私自信も玉ではありません。

 

そうであれば、貴重な時間をそこに費やす意味はあまり無いのではないでしょうか。

 

結局は、自己が語りかけたい読者だけを想定した文章を作成すれば良く、ネット上での 「異種格闘技戦」に期待することは現時点ではまだ、 無理なのではないでしょうか。

 

寂しい現実ですが。

 

駄文失礼。

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コメント

TBありがとうございます。
私も、留学中で時間に余裕のあるうちは、それでも異種格闘技戦の中からたまに何かを得られればそれでよしと思えるわけですが、その余裕がなくなる帰国後はどうしようかと悩みどころだなぁという気はします。

投稿: 47th | 2006年11月13日 (月) 15:26

コメント、ありがとうございます。

そうですね。

47th先生のようにお忙しい身ですと、ネットの議論における費用対効果は低いものになる危険性が多分にありますね。

ネットはネットとして割り切った上で、傍観者に徹底するのも1つの手になり得るのではないか、と思ったりもしますが(^_^;)。

投稿: shoya | 2006年11月14日 (火) 23:34

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