【民法】 無権代理行為と法定追認について
今日は、無権代理行為と法定追認について、簡単に一言。
■問題の所在
無権代理行為は追認をすることができる(116条)。
そして、追認については、125条で法定追認の規定が置かれている。
この125条は、「取り消すことができる行為」を対象とする規定であるため、無権代理行為について直接適用することはできない。
何故ならば、無権代理行為は有効要件(効果帰属要件)を欠く行為であり、 「取り消すことができる行為」ではなく、「無効」な行為だからである。
では、類推適用することはできないのか?
■最高裁の立場
この問題について、最高裁は、類推適用を否定する。
即ち、最高裁は……
「取消しうべき行為についての法定追認を定めた民法125条の規定は、無権代理行為の追認には類推適用されないと解するのが相当である」(最判昭和54年12月14日集民128号215頁)
……と考えているのである。
しかし、最高裁自身は、この理由について何も述べていない。
但し、判例タイムズの匿名解説は、概ね次のように述べる(判タ406号82頁)。
即ち、取り消し得る行為は、取り消されるまでは一応有効な法律行為として存在する。
そして、125条はこのような不確定状態を解消するために設けられた「みなし規定」である。
他方、無権代理行為は初めから無効であって、不確定状態は存在しない。
従って、125条を類推する基礎は無い。
また、学説でも、無権代理行為は初めから無効である以上、「効果を及ぼすには積極的な追認が必要であると考えるべきであり、 単なる一定の事実によって追認を擬制するのは適当でない」(四宮和夫=能見善久『民法総則〔第7版〕』 〔弘文堂、平成17年〕292頁)とされており、判例を支持する傾向にあるようである(但し、 学説では、そもそもあまり議論されていない)。
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コメント
今回のテーマは面白かったです。「無権代理行為に法定追認に関する民法125条の適用があるか」という論点については、そもそもあまり考えてみたことがなかったのですが、実際には問題となりうる場面は数多く存在しそうですよね。類推適用を否定する理由付け共々、勉強になりました(^_^) 。
投稿: 春夏秋冬 | 2006年11月 7日 (火) 13:56
春夏秋冬さん、お久しぶりです。
お褒め頂いて光栄ですm(__)m。
細かい論点ですが、以前、疑問に思ったことがあり、調べたことを記事にしてみた次第です。
投稿: shoya | 2006年11月 7日 (火) 15:29
今日、学校の先生に聞いてみたんですよ。
たしか類推適用できるんじゃ?
みたいな答えだったんですが、
類推適用できないんですね。
解決しました!
択一試験でたら、もう絶対忘れない。
ありがとうございました!!
投稿: OZ | 2007年6月 9日 (土) 02:05
OZさん、コメントありがとうございます。
お役に立てたならば幸いです。
今後ともよろしくお願い致します。
投稿: shoya | 2007年6月10日 (日) 12:36