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2006年11月19日 (日)

【民法】 416条2項について簡単な説明

先日、質問を受けたので、今日は民法の相当因果関係説の「特別の事情によって生じた損害」(416条2項)について、簡単に一言。

非常に基本的な事柄を説明するだけなので、特に目新しいことは無いが……。

 

 

■条文

416条 【損害賠償の範囲】

1項
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2項
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、 債権者は、その賠償を請求することができる。

 

 

■説明

伝統的通説によれば、416条1項は、債務不履行に基づく損害賠償の範囲について相当因果関係説を採用する旨を規定している (但し、現在では相当因果関係説に対する批判がかなり有力である。例えば、潮見佳男『債権総論〔第2版〕 I』〔信山社、2003年〕328頁以下参照)。

 

そして、416条2項は、「特別の事情によって生じた損害」がある場合の特則を定めている。

 

ここに、「特別の事情によって生じた損害」(いわゆる特別損害)とは、 「特別の事情から事物自然の性質に従って通常生ずべき損害」(前田達明『口述 債権総論 第三版』〔成文堂、平成5年〕192頁。太字は引用者)を意味する。

 

 

ポイントは、特別損害は、通常生ずべき損害の一種である、 という点である。

 

つまり、特別損害は、その発生原因たる事情が特殊なだけで、 その特殊事情から発生に至る因果経過自体は通常のものなのである。

 

 

より端的に言えば、 416条2項は判断基底の範囲を定めているだけなのである

 

従って、伝統的通説に従えば、 債務不履行に基づく損害賠償の範囲は全て相当因果関係の有無によって決せられる。

 

但し、債務者が特に予見した、または予見し得た事情が存在する場合には、 その事情も判断基底に加えられる。

 

 

以上の説明からも分かるように、結局、民法でも、

 

「判断基底の決定」 → 「その判断基底を基にした相当性の有無の判断」

 

という刑法の相当因果関係説と同様の思考プロセスをたどっているのである。

 

尚、詳細をお知りになりたい方は、上記引用文献の他、我妻栄『新訂 債権総論』岩波書店、 1964年)120頁以下などを参照されたい。

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コメント

416条は、ずっと理解に苦しんでいました。
突き抜けるようなご説明、ありがとうございました。

投稿: socb | 2006年11月20日 (月) 14:00

コメント、ありがとうございます。
お役に立てたのであれば、光栄です。

投稿: shoya | 2006年11月20日 (月) 22:07

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