【民法】 423条・424条における被保全債権不存在の場合の判決
今日は、債権者代位権(423条) 、詐害行為取消権(424条)が行使された訴訟で、 被保全債権の不存在が明らかになった場合の判決について、簡単に一言。滅多に無い事例だが。
債権者代位訴訟の場合、被保全債権の不存在が明らかになると、 訴えは却下される。
何故ならば、被保全債権の存在は「債権者代位訴訟における当事者適格の存否判断の基礎となる事実」だからである (潮見佳男『プラクティス民法 債権総論〔第2版〕』〔信山社、2005年〕116頁)。
他方、詐害行為取消権の場合、被保全債権の不存在が明らかになると、 請求は棄却される。
理由は次の通りである。
そもそも、債権者代位権では債務者という権利行使者(=代位債権者) 以外の者に帰属する権利が行使される。
端的に言えば、被代位債権は、債務者のものであり、代位債権者のものではない。
そのため、代位債権者が債務者に帰属する債権を訴訟で行使するには――当事者適格を認めるには――特別の根拠が必要となる。
それが被保全債権の存在である(尚、 いわゆる無資力要件も同様に当事者適格を基礎付ける)。
しかし、詐害行為取消権は、債権者代位権と異なり、債権者に帰属する権利である。
従って、その行使に当たって特別の根拠は不要である。
そのため、被保全債権の存在は訴訟物を支える成立要件と考えられる。
この結果、詐害行為取消権においては、被保全債権の不存在が明らかになると、訴訟物が不成立であるとして棄却判決が出される。
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