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2007年1月12日 (金)

【民法】 嫡出推定と嫡出否認の訴えについて

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <離婚300日以内>早産の男児も無戸籍に 9日不足
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070112-00000013-mai-soci

 

上記記事に関連して、今日は、嫡出推定についてごく簡単に一言。

 

 

 

■条文

(嫡出の推定)
第772条
第1項

妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

第2項
婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、 婚姻中に懐胎したものと推定する。

 

 

 

■条文の説明

772条の推定効は2段構えになっており……

 

婚姻成立から200日後の出産、または婚姻の解消・取消しから300日以内の出産

→ 婚姻中の懐胎が推定される(2項)

→ 婚姻中に懐胎したならば、夫の子と推定される(1項)

 

……という構造になっている。

 

したがって、本件のように、離婚後300日以内の出産の場合、2項で前婚の婚姻中の懐胎が推定され、1項で前婚の夫(前夫) の子と推定される。

 

このように、「民法は、懐胎時推定、父性推定という2段階の推定を行なっているのだが、 これらをあわせて嫡出推定と呼んでいる」(道垣内弘人=大村敦志 『民法解釈ゼミナール5 親族・相続』〔有斐閣、1999年〕81頁。太字は引用者)。

 ちなみに、実は、民法上の「嫡出」 の意義は必ずしも明確ではない(中川善之助=米倉明『新版注釈民法(23) 』〔有斐閣、平成16年〕150頁以下参照〔高梨公之=高梨俊一〕)。

 

 

但し、最高裁は、形式的に772条1項に該当する場合であっても、全く性交渉が無かったなどの場合は嫡出推定は及ばないとしている。

 

最判昭和44年5月29日民集23巻6号1064頁

「原審の確定した事実によれば、被上告人らの母西海百合江は、昭和21年訴外伊藤重雄と結婚したが、 同24年4月頃伊藤と事実上の離婚をして別居し、爾来同人とは全く交渉を絶ち、同26年10月2日正式に離婚したのであるが、 それに先だつ同25年9月頃から同39年3月頃までの間上告人と肉体関係を持続し、その間同27年3月28日被上告人西海光子を、 同31年1月31日被上告人西海正典を各分娩し、同人らを自己の嫡出でない子として出生届をしたというのである」

 

「右事実関係のもとにおいては、 被上告人光子は母百合江と伊藤重雄との婚姻解消の日から300日以内に出生した子であるけれども、 百合江と重雄間の夫婦関係は、 右離婚の届出に先だち約2年半以前から事実上の離婚をして爾来夫婦の実態は失われ、 たんに離婚の届出がおくれていたにとどまるというのであるから、 被上告人光子は実質的には民法772条の推定を受けない嫡出子というべく、 同被上告人は伊藤重雄からの嫡出否認を待つまでもなく、上告人に対して認知の請求ができる旨の原審の判断は正当として是認できる」

 

問題は、いかなる場合に、この「推定を受けない嫡出子」――学説の言う「推定の及ばない嫡出子(推定が及ばない嫡出子)」―― に該当するか、という基準である。

 

だが、学説は結論の一致を見ておらず、外観説、血縁説、家庭破綻説、合意説などが主張されている(二宮周平 『家族法 第2版』〔新世社、2005年〕165頁以下参照)。

 

 

 

■嫡出推定の効果

この嫡出推定の効果は強力で、推定効を覆すには嫡出否認の訴え(775条、774条)を提起するしかない。

この主張は必ず「訴え」で為される必要があり、かつ、 原則として夫以外の者は主張することができない

 

 

 

■問題点

上記のように、嫡出否認の訴えは夫外の者は主張することができない。

 

そのため、夫が妻の産んだ子を自分の子ではないと知っていても、 夫が嫡出否認の訴えを提起しなければ、その子は法律上、夫の子とされる。

 

もちろん、科学的にはDNA鑑定などをすれば父子関係の存在は容易に証明できる。

 

しかも、 「1991年~95年に東京家裁において争われた嫡出否認事件でDNA鑑定が行なわれたものは18件あるが、 取下となった2件以外はすべて鑑定結果どおりの審判(親子関係なし) がなされており、鑑定結果と異なる判断がなされた例はない」(大村敦志 『家族法〔第2版補訂版〕』〔有斐閣、2004年〕88頁 )。

 

しかし、現行法上、人事訴訟で鑑定を強制する手段は無い。

 

また、「鑑定に協力しなかったからといって、これを証明妨害と捉え、証明責任を転換することも認められない」 (前掲・二宮167頁)。

現に、東京高判平成7年1月30日判時1551号74頁は次のように述べる。

 

「控訴人は、 被後訴人が父子関係の存否に関する鑑定嘱託の申請に協力しないことが証明妨害であり、 主観的立証責任が転換されるべきである旨主張する」

 

「控訴人が、……当審において、同趣旨の鑑定嘱託の申請をしたが、 被控訴人等の協力が得られずに鑑定嘱託が採用されなかったことは、当裁判所に顕著である」

 

「たしかに、 前述のように嫡出推定の排除のための立証に何人も疑いを差し挟まないような信頼するに足りる証拠を要求すれば、 通常血液鑑定に頼らざるを得ないことになるが、親子関係不存在確認の調停が成立せずに訴訟に至った事案においては、 血液鑑定への相手方の協力が期待し難いことが多いものと思われる」

 

「しかし、前記のとおり当事者の利害だけにとどまらない公益性のある身分関係訴訟においては、 一方当事者の訴訟上の態度によって、立証上その者に不利益な判断をすることは許されないちなみに、 文書提出命令に応じない当事者に対して不利益な判断をすることを許容した民訴法317条の規定は、親子関係事件には適用されないのである (人事訴訟手続法32条、 10条1項)」

 

 

 

■結論

結局、現行法、および現在の判例法理からすれば、区役所の対応は正しいということになる。

最高裁が判例を変更するか、違憲審査権を行使すれば話は別だが……。

 

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コメント

わかりやすい説明、ありがとうございました。

投稿: ひろ | 2007年1月13日 (土) 午前 01時09分

>>ひろさん

お褒め頂いて光栄です。
そう言って頂けるとこれからの励みになります(笑)。

投稿: shoya | 2007年1月14日 (日) 午前 06時24分

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