【刑訴】 312条1項に「関連する」基礎知識
今日は、312条1項に「関連する」基礎知識について、一言。
ただ、今日のテーマは、あくまで「関連する」基礎知識であって、 訴因変更の要否・可否・許否などの問題については本稿の対象ではない。
■条文
312条1項
裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、
起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
■定義
訴因とは、 「社会的事実を犯罪構成要件にあてはめて法律的に構成した具体的事実」を言う(松本時夫=土本武司『条解 刑事訴訟法〔第3版増補版〕』〔弘文堂、平成18年〕468頁)。
訴因の追加とは、「予備的若しくは択一的関係に立つ訴因、 又は牽連関係若しくは観念的競合(刑法54条1項)に立つ訴因を新たに加えること」を言う (司法研修所検察教官室編『検察講義案(平成15年版)』〔法曹会、平成16年〕113頁)。
訴因の撤回とは、「科刑上一罪の関係にある複数の訴因や、 主たる訴因と予備的又は択一的訴因の関係にある訴因のうち、その一部を取り除くこと」を言う(池田修=前田雅英『刑事訴訟法講義』〔東京大学出版会、第2版、2006年〕248頁)。
訴因の変更とは、「個々の訴因の内容に変更を加えること」を言う (前掲・松本=土本622頁)。
■簡単な説明&典型例
訴因の追加の典型例としては、住居侵入窃盗の場合がある。
即ち、当初、住居侵入罪の訴因で起訴していたが、訴訟の途中で窃盗罪の訴因を加えるという場合である。
このように、訴因の追加の特徴は、当初の訴因がそのまま残るという点にある。
上記具体例に即して言うと、当初の住居侵入罪の訴因がそのまま残っているという点に訴因の追加の特徴がある。
訴因の撤回の典型例としても、同じく住居侵入窃盗の場合がある。
即ち、当初は住居侵入罪と窃盗罪の牽連犯で起訴していたが、途中で窃盗罪の訴因を除去するという場合である。
このように、訴因の撤回の特徴は、訴因の追加とちょうど逆の関係、という点にある。
訴因の変更の典型例は、窃盗罪の訴因を盗品等有償譲受け罪に変える場合である。
そして、訴因の変更の特徴は、個々の訴因の内容が変更されるだけで、 訴因の個数に増減は無いという点にある。
■注意点
ちなみに、訴因の変更と追加は混乱することがあるので注意が必要である。
上記のように、訴因の変更とは、あくまで「個々の訴因」 の内容に変更を加えることを意味する。
換言すれば、個々の訴因の内容に変更を加えていればそれは「変更」であって、追加や撤回ではない。
したがって、繰り返しになるが、単一の訴因を構成する事実の一部を付加・撤去することは、訴因の追加撤回ではなく、「変更」である (前掲・松本=土本622頁)。
これは常習一罪の場合でも同じである。
即ち、常習一罪は単一の訴因を構成する。
そして、単一の訴因を構成する事実の一部を付加・撤去することは訴因変更である。
したがって、常習一罪の一部を構成する事実を付加することは訴因変更である(福岡高判昭和42年3月24日高刑集20巻2号114頁参照)。
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