【民法】 組合と共有の区別について
今日は、組合と共有の区別について、一言。
■条文
(組合契約)
第667条1項
組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
(共有物の分割請求)
第256条1項
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、 五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
■問題
ある共同使用関係が存在する場合――特に、共同使用に関する合意が当事者間に為されている場合――に、それが単純な共有関係か、 それとも組合契約に基づく共有関係(合有関係)かを区別する基準は何か?
■区別基準ははっきりしない
結論から言うと、単純な共有関係と、組合契約に基づく共有(合有)関係を、現実的に明確に区別する基準は未だ解明されていない。
つまり、理論的には両者の区別はできるのであるが、実際の事例においては区別が困難な場合がある。
特に、「共同所有の目的物が主として一個のものに限定されている場合」にはその区別が困難になりやすい(鎌田薫ほか編著『民事法 I 』〔日本評論社、2005年〕73頁〔後藤元伸〕)。
福地先生も、土地の共有物使用関係について次のように述べられ、 その例として最判昭和26年4月19日民集5巻5号256頁を挙げられる。
「土地の共有者の共有物使用関係が、 何らかの共同目的のものであれば組合となりうるが、たんに共有物の使用方法の協定にすぎなければ組合とはならない。しかし、 その限界の認定は必ずしも容易ではない」(鈴木禄弥編『新版 注釈民法(17)』〔有斐閣、 平成13年補訂版〕49頁)。
ただ、そうは言っても区別の基準となり得る要素はある。
その例として、時間的要素、団体的要素がある。
■時間的要素
即ち、組合契約は一定の「事業」のために締結される契約であるが、この事業は継続的なものであることが多い。
他方、物権法の共有関係は、「例外的一時的な共同所有関係」とされている(北川善太郎『債権各論(民法講要IV)〔第3版〕』〔有斐閣、2003年〕100頁)。
したがって、ある共同使用関係が継続的なものであれば、 その関係は組合である可能性が高いと言える。
但し、以下の点に注意が必要である。
確かに、物権法の共有関係が「例外的一時的」であるという命題は、沿革や解釈からすればその説得力に疑いは無い。
しかし、現実的にはその命題は”建前”に過ぎず、長期にわたる共有関係も多数存在する。
また、逆に、一時的な事業目的に基づく組合契約も存在し得る。
そのため、時間的要素は絶対的な判断要素ではない。 他の要素と組み合わせて判断することが重要である。
■団体的要素
256条1項によれば、「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」。
この規定は、前述したように、共有関係が「例外的一時的」なものと考えられていることに基づく。
つまり、「民法の起草者は、共同所有では共同所有者が互いに権利を制約しあうことになるため物が効率的に利用・ 処分されない結果になりがちであり、社会経済上好ましくないと考えていた。そのために、 共同所有関係が容易に解消されるような規定が基本とされたのである」( 佐久間毅『民法の基礎2 物権』〔有斐閣、2006年〕190頁)。
他方、組合財産についてはこのような要請は働かない。
むしろ、組合財産の「共同所有は組合の事業を遂行するための手段であるため、共同事業の遂行に支障を来たさないよう、 共同所有者の持分権処分の自由や分割の自由が制約されている」(前掲・佐久間191頁)。
したがって、当事者間の合意内容から見て、ある物に対する共同使用関係が容易に解消できるものであれば、 その関係は物権法に言う共有関係である可能性が高い。
逆に、当事者間の合意内容から見て、共同使用関係の解消が困難であれば、その関係は組合契約に基づくものである可能性が高い。
■注意点
前掲・最判昭和26年4月19日によれば、単に物を共同で所有するという行為は667条1項に言う「事業」 には当たらないとされている。
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