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2007年2月28日 (水)

【会社法】 主要目的ルールについて

今日は、主要目的ルールについて、簡単に一言。

 

 

 

■問題

いわゆるニッポン放送対ライブドア事件(東京高決平成17年3月23日判時1899号56頁)に関する予備校の解説の中に、 本決定は主要目的ルールを用いなかった、と”断定的に”説明するものがある。

 

この説明は適切か?

 

 

 

■定義

主要目的ルールの定義は必ずしも一致している訳ではないが、有力な見解は次のように述べる。

 

主要目的ルールとは「取締役会が募集株式の発行等を決定した種々の動機のうち、 自派で議決権の過半数を確保する等の不当目的達成動機が他の動機に優越する場合にその発行等の差止めを認め、他の場合には認めない」 という考え方を言う(江頭憲治郎『株式会社法』〔有斐閣、2006年〕683頁)。

 

 尚、本稿では取り上げないが、 主要目的ルールが募集株式の発行のみならず新株予約権の発行についても適用があるか、については争いがある。

 

 

 

■東京高決平成17年3月23日

判例検索システム>検索結果詳細画面
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=11&hanreiKbn=03

 

「会社の経営支配権に現に争いが生じている場面において,株式の敵対的買収によって経営支配権を争う特定の株主の持株比率を低下させ, 現経営者又はこれを支持し事実上の影響力を及ぼしている特定の株主の経営支配権を維持・ 確保することを主要な目的として新株予約権の発行がされた場合には,原則として,商法280条ノ39第4項が準用する280条ノ10にいう 『著シク不公正ナル方法』による新株予約権の発行に該当するものと解するのが相当である」。

 

「もっとも,経営支配権の維持・ 確保を主要な目的とする新株予約権発行が許されないのは,取締役は会社の所有者たる株主の信認に基礎を置くものであるから, 株主全体の利益の保護という観点から新株予約権の発行を正当化する特段の事情がある場合には,例外的に,経営支配権の維持・ 確保を主要な目的とする発行も不公正発行に該当しないと解すべきである」。

 

 

 

■説明

結論から言うと、当該予備校の説明は適切ではないと思われる。

 

 ただ、 その予備校が当該説明の文脈で用いている「主要目的ルール」の意義がはっきりできないので、断定はできない。

 

少なくとも、本決定でも主要目的ルールは用いられているとする学説は少なからず存在する。

したがって、”断定的”な説明は避けた方が良いのではないかと思われる。

 

 

ただ、本決定についてそのような説明が為されたのには、それなりの理由があると考えられる。

 

 

即ち、本決定は、「現経営陣の支配権維持を目的とした新株予約権の発行は原則として許されないとしつつ、 例外的に適法とされる場合がありうる旨を明示的に述べる点に大きな特徴がある」(藤田友敬 「ニッポン放送新株予約権発行差止事件の検討〔下〕」商事法務1746号4頁)。

 

つまり、従来の下級審裁判例では、主要目的が支配権維持にあると認定されると、”直ちに”不公正発行に当たるとされていた。

 

したがって、不公正発行該当性を否定したい場合には、何とかして資金調達目的を認定する必要があったのである。

 

 

言わば、支配権維持目的はブラックホールのような存在で、 それが主たる動機として認定されると他の動機はすべてブラックホールに吸収されてしまう。

 

下級審では主要目的ルールについてこのような運用が為される傾向にあった。

 

 

しかし、本決定は、主要目的が支配権維持であったとしても、「特段の事情」がある場合には不公正発行に当たらないとしている。

 

本決定は、支配権維持目的はブラックホールではなく、他の事情で”埋め合わせる”余地があるとしたのである。

 

そして、これは従来の下級審の主要目的ルールの運用の傾向とは異なる。

 

そのため、本決定は従来と異なるもののように見える。

 

また、実際、藤田先生は、本決定が「従来の主要目的ルールの運用に大きな変化を加える可能性がある」と指摘される (藤田友敬「ニッポン放送新株予約権発行差止事件の検討〔上〕」商事法務1745号9頁)。

 

 

 

ちなみに、本決定は、いわゆる機関権限分配秩序論の考え方を採用しているように思われる。

 

この考え方は京大の森本先生や洲崎先生によって主唱されている見解であり、憲法の統治構造に近い視点を提供する。

 

例えば、川濵先生はこの考え方を次のように端的に述べられる。

 

「取締役は、 自己の利益のために権限を行使してはならないのであるから、支配維持のためその権限を行使することは許されない。 たとえ支配を維持することが会社の利益になると考えたとしても、このことは当然にはそのための権限行使を正当化しない。なんとなれば、 会社の支配は株主の意思決定に基づいて決せられるべきものであり、株主の意思決定とは無関係に、 会社支配の移転を阻止するべくその権限を行使することは許されないからである」(川浜昇 「株式会社の支配争奪と取締役の行動の規制(三・完)」民商95巻4号491頁)。

 

 

 

■参考文献

森本滋「新株の発行と株主の地位」法学論叢104巻2号1頁以下。

洲崎博史「不公正な新株発行とその規制(二・完)」民商94巻6号721頁以下。

 

文中の藤田先生のご論文はhttp://www.j.u-tokyo.ac.jp/~tfujita/chosaku/chosaku.htmlからもダウンロードできます。

 

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