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2007年3月 1日 (木)

【刑法?】 『そして殺人者は野に放たれる』について思うこと

danさんのブログに興味深い記事がございましたのでご紹介いたします。

 

404 Blog Not Found:刑法三十九条は世界の非常識
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50776304.html

 

 

ちなみに、danさんは、日垣隆氏の『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社、平成18年)を参考文献として挙げられていますが、 同書はところどころ不正確な部分がありますので、盲信しない方が無難ではないかと思います(日垣氏の主張が誤っているとか、氏の主張に私が同意しないという意味ではありません) 。

 

 

例えば、氏は

 

「自ら招いた心神喪失状態によって無罪をかすめとろうとい不埒な犯罪者に対しても、日本の刑法は未だ無防備なままである (かろうじて学説により「原因において自由な行為」理論という珍設が披瀝されているにすぎない)」 (前掲・ 日垣296頁)。

 

と述べられています。

 

 

確かに、刑法典自体は、いわゆる原因において自由な行為について明文を置いていません。

 

しかし、「原因において自由な行為の理論は、 現在では我が国の判例も採用するところ」裁判所職員総合研修所編『刑法総論講義案』〔司法協会、平成16年〕245頁) であることは刑法総論を学んだことがあるものであれば当然知っているはずです。

 

また、学説上も、その理論構成や適用範囲に争いはありますが、原因において自由な行為を全く認めない見解は少数だと思われます。

 

 

つまり、判例・多数説は、原因において自由な行為を処罰対象としています。

 

日垣氏の上記引用部分はこの現状と合致するでしょうか?(ちなみに氏は東北大学法学部出身です

 

氏は、原因において自由な行為の理論は「珍説」である旨を指摘されていますが、どのような意味で「珍説」なのでしょうか?

 

 

もちろん、刑法典が明文を置いていないのは事実ですし、その部分を修正すべきだという指摘は傾聴に値します。

 

ですが、自分のご主張に合わせて事実を解釈するのはあまり適切ではないのではないか、と私は思います。

 

また、同書では他国の刑法も引用されていますが、どのような基準で当該刑法が選択されたのか、その基準が不明確です。

 

 

不躾な表現ですが、これでは

 

子供「みんな、○○買って貰ってるよ! 僕にも買ってよ」

 

母親「みんなって誰?」

 

子供「A君とB君……」

 

というような子供の論理構成――言葉を意図的に選択することによって事実を枉げる構成――と同じような感想を抱いてしまいます。

 

これは勿体無いと私は思います。

せっかくの主張に瑕がついてしまいます。

 

 

繰り返しになりますが、氏の主張自体は傾聴に値しますし、法律を学ぶものであれば是非検討すべき主張です。

 

ただ、その主張の仕方が”荒い”のです。

 

 

同書の解説で斉藤環氏は

 

 

「およそどんな誤解の余地のないほど公正かつ明晰に書かれた本書に、果たしていかなる『解説』が必要でしょうか」。

 

と仰っていますが、私は、同書に対してそのような評価を下すことはできません。

 

 

同書は継続的に売れているようですし、氏の文章は巧みです。

 

今こそ、氏の主張を広げるチャンスとも言えるわけです。

 

ですから、本稿のようなつまらない”揚げ足取り”に遭わないためにも、表現の正確さを増した方が良いのではないか、と私は思います。

 

氏が発信しているメッセージは、我々が考えねばならないことなのですから。

 

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