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2007年3月16日 (金)

【会社法】 210条・247条の「法令」は善管注意義務・忠実義務を含むのか?

今日は、質問があったので、募集株式の発行差止請求(210条)、 および募集新株予約権の発行差止請求(247条)の「法令」は善管注意義務 (330条、民法644条)や忠実義務(355条)を含むのか、という問題について一言。

 

 

 

■条文

第210条
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、 第199条第1項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。

一 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合

二 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合

 

第247条
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、 第238条第1項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる。

一 当該新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合

二 当該新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合

 

 

■結論

結論から言うと、分からない

 

含むか否かについて、最高裁の判断が無いし、学説が分かれているからである。

 

但し、たとえ「法令」には善管注意義務・忠実義務が含まれないとしても、

 

「これらの義務違反があれば、 著しく不公正な方法による発行となることが多いからやはり差止めの対象となる」 (竹内昭夫〔弥永真生補訂〕『株式会社法講義』〔有斐閣、2001年〕674頁。 青字は引用者)。

 

ことに注意が必要である。

 

したがって、以下の説明はある意味「議論のための議論」と言えなくも無い。

 

 

 

■説明

「法令」には善管注意義務や忠実義務が含まれないとする見解は次のように述べる。

尚、旧法下の条文を前提とした記述になっている。

 

「この場合の法令違反は、 266条1項5号や272条と異なり、具体的な法規の違反を意味し、不公正発行は多くの場合254条3項・ 254条ノ3のような抽象的な法規に違反する場合を指すと解される」(鈴木竹雄=竹内昭夫『会社法〔第三版〕 』〔有斐閣、法律学全集28、平成6年〕423頁注(1))。

 

このような記述は、前掲・竹内674頁や上柳克郎ほか編集代表『新版 注釈会社法(7)』(有斐閣、昭和62年)289頁〔近藤弘二〕 にもある。

 

 

他方、会社法施行後の文献ではこの問題自体に触れていないことが多く、私が見た限りでは、近藤光男先生が次のように述べるだけである。

 

「法令違反には、 取締役の注意義務違反や忠実義務違反といった一般的義務違反の行為のみならずあらゆる法令違反が含まれる」(近藤光男『最新株式会社法(第3版)』〔中央経済社、平成18年〕299頁)。

 

私自身は、実際の結論や条文の文言からすれば、近藤光男先生のように考えるのが筋だと思う。

 

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