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2007年3月28日 (水)

【民法】 抵当権の譲渡・放棄

 

新旧司法試験も近いので、今日は択一試験に良く出題される(?)抵当権の(順位の)譲渡・放棄について、簡単に一言。

 

 

 

■条文

(抵当権の処分) 第376条

第1項
抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、 若しくは放棄することができる。

 

第2項
前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、 その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。

 

 旧法と条文番号が異なるので注意。

 

 

 

■定義

抵当権の譲渡とは、抵当権者が「抵当権を有しない債権者に抵当権を与え、 その限度で自分は無担保債権者になること」を言う( 近江幸治『担保物権法 〔新版補正版〕』〔弘文堂、平成10年〕207頁)。

 

抵当権の放棄とは、抵当権者が「他の債権者の利益のために、優先弁済の利益を放棄すること」を言う (前掲・近江207頁)。

 

抵当権の順位の譲渡とは、「抵当権者間において、その順位の入替えを行うこと」を言う (前掲・近江208頁)。

 

抵当権の順位の放棄とは、「先順位抵当権者が後順位抵当権者に対し、 自己の優先弁済の利益を放棄すること」を言う(前掲・近江210頁)。

 

 

 

■説明

具体的な効果については、どの基本書・参考書にも載っていると思われるので省略し、効果の理解のためのポイントを幾つか紹介する。

 

と言っても、全く大したポイントでは無いのだが(-_-;)。

 

 

第1のポイントは、定義の具体的理解である。

 

つまり……

 

「『譲渡』とは、 処分者の有する優先弁済権を受益者に取得させることであり、『放棄』とは、 処分者の有する優先弁済権を受益者との関係では主張しないことである」(道垣内弘人『担保物権法』〔有斐閣、第2版、2005年〕193頁。太字は引用者

 

……ということを”具体的に”理解することが重要である。

 

これを理解していれば、以下の説明は自動的に導かれる。

 

 

 

第2のポイントは、定義を”具体的に”理解すれば分かることだが、抵当権の譲渡・ 放棄は抵当権者と非抵当権者との間で行われ、 抵当権の順位の譲渡は抵当権者間で行われる、ということである。

 

何故ならば、非抵当権者は「抵当権を有していないのだから、抵当権自体を譲渡・放棄しなければ、上記の効果は達成できないのに対し、 他の抵当権者には、順位を譲渡・放棄すればたりる」からである(前掲・道垣内193頁)。

 

 ところで、道垣内先生は前掲書193頁で、抵当権の譲渡・放棄は「一般債権者に対して」為されると説明されているが、正確には 「非抵当権者に対して」ではなかろうか。

 

 

 

第3のポイントは――第1のポイントと重複するのだが――、 譲渡の場合は相手方に優先弁済権があるのに対して、 放棄の場合は相手方に優先弁済権はない、ということである。

 

第1のポイントの記述から分かるように、譲渡の場合は相手方に優先弁済権を取得させている。

 

したがって、譲渡の場合は、

 

相手方 > 自分

 

という関係にある。

 

その結果、換価金はまず相手方の債権に充当され、その残額が自分の債権に充当される。

 

 たまに間違える方がおられるが、「譲渡」は客観的に抵当権を譲渡するわけではない。したがって、残額があればそれは” 譲渡人” たる抵当権者に回される。

 

 

他方、放棄の場合は、優先弁済権を相手方との関係で主張しないだけで、 相手方が優先弁済権を有している訳ではない。

 

したがって、放棄の場合は

 

相手方 = 自分

 

という関係にある。

 

その結果、換価金は、自分と相手方のそれぞれの債権額に応じて比例分配される。

 

 

 

第4のポイントは、「順位」の譲渡・放棄の場合は、 両抵当権者間が受け取ることができる換価金の合計額が基準とされる。

 

端的に言えば、「順位」が付く場合は合計額が基準とされる。

 

この理由は……ご自分で考えてみて頂きたい。

 

前述した道垣内先生の説明を”具体的に”理解していれば、答えは出るのではないか、と思う。

 

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