【民法】 代理出産に関する最高裁の新決定
取り急ぎ、決定の内容をご紹介いたします。
Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <代理出産>向井亜紀さんの双子、
最高裁が実子とは認めず
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070323-00000049-mai-soci
「タレントの向井亜紀さん(42)と元プロレスラーの高田延彦さん(44) 夫妻が、米国での代理出産でもうけた双子の男児(3)の出生届を受理するよう東京都品川区に求めた家事審判で、最高裁第2小法廷 (古田佑紀裁判長)は23日、受理を命じた東京高裁決定を破棄し、申し立てを退けた」。
平成18(許)47
市町村長の処分に対する不服申立て却下審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件平成19年03月23日最高裁判所第二小法廷
http://kanz.jp/hanrei/detail.html?cat=01&key=02&ord=02&idx=1565
判決文は こ ち ら(PDF) です。
非常に荒っぽく言えば、最高裁は、この問題は司法権ではなく立法権で解決すべきもの、としました。
以下、判決文の一部を抜粋いたします(青字は引用者)。
■民訴118条3号の適用について
「実親子関係は,身分関係の中でも最も基本的なものであり, 様々な社会生活上の関係における基礎となるものであって,単に私人間の問題にとどまらず,公益に深くかかわる事柄であり, 子の福祉にも重大な影響を及ぼすものであるから,どのような者の間に実親子関係の成立を認めるかは, その国における身分法秩序の根幹をなす基本原則ないし基本理念にかかわるものであり, 実親子関係を定める基準は一義的に明確なものでなければならず,かつ,実親子関係の存否はその基準によって一律に決せられるべきものである」 。
「したがって,我が国の身分法秩序を定めた民法は, 同法に定める場合に限って実親子関係を認め,それ以外の場合は実親子関係の成立を認めない趣旨であると解すべきである」。
「以上からすれば,民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は, 我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものであり, 民訴法118条3号にいう公の秩序に反するといわなければならない」。
■民法の適用について
「民法の母子関係の成立に関する定めや上記判例は, 民法の制定時期や判決の言渡しの時期からみると,女性が自らの卵子により懐胎し出産することが当然の前提となっていることが明らかであるが, 現在では,生殖補助医療技術を用いた人工生殖は,自然生殖の過程の一部を代替するものにとどまらず, およそ自然生殖では不可能な懐胎も可能にするまでになっており, 女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産することも可能になっている」。
「そこで, 子を懐胎し出産した女性とその子に係る卵子を提供した女性とが異なる場合についても,現行民法の解釈として, 出生した子とその子を懐胎し出産した女性との間に出産により当然に母子関係が成立することとなるのかが問題となる」 。
「この点について検討すると, 民法には,出生した子を懐胎, 出産していない女性をもってその子の母とすべき趣旨をうかがわせる規定は見当たらず,このような場合における法律関係を定める規定がないことは, 同法制定当時そのような事態が想定されなかったことによるものではあるが, 前記のとおり実親子関係が公益及び子の福祉に深くかかわるものであり, 一義的に明確な基準によって一律に決せられるべきであることにかんがみると,現行民法の解釈としては, 出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず,その子を懐胎,出産していない女性との間には, その女性が卵子を提供した場合であっても,母子関係の成立を認めることはできない」。
■立法による対応の要請
「もっとも, 女性が自己の卵子により遺伝的なつながりのある子を持ちたいというい気持ちから, 本件のように自己以外の女性に自己の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産することを依頼し,これにより子が出生する, いわゆる代理出産が行われていることは公知の事実になっているといえる」。
「このように,現実に代理出産という民法の想定していない事態が生じており, 今後もそのような事態が引き続き生じ得ることが予想される以上, 代理出産については法制度としてどう取り扱うかが改めて検討されるべき状況にある」。
「この問題に関しては,医学的な観点からの問題,関係者間に生ずることが予想される問題,生まれてくる子の福祉などの諸問題につき, 遺伝的なつながりのある子を持ちたいとする真しな希望及び他の女性に出産を依頼することについての社会一般の倫理的感情を踏まえて, 医療法制,親子法制の両面にわたる検討が必要になると考えられ,立法による速やかな対応が強く望まれるところである」 。
■関連する拙稿
【民法】 嫡出推定と嫡出否認の訴えについて
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_0557.html
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