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2007年5月11日 (金)

【民法】 取得時効の起算点は初日算入? 不算入?

今日は、質問を受けたので、時効の起算点について、一言。

基本的な事項である。

 

 

 

■条文

(期間の起算) 第140条

日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

 

 

(所有権の取得時効) 第162条

1項  20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2項  10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

 

 

 

■問題の所在

最高裁によれば、時効期間の開始時点、即ち、起算点は占有開始時である。

 

「第1の買主がその買受後不動産の占有を取得し、その時から民法162条に定める時効期間を経過したときは、同法条により当該不動産を時効によつて取得しうるものと解するのが相当である」(最判昭和46年11月5日民集25巻8号1087頁)。

 

 

ところで、民法140条本文によれば、「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない」ことになっている。

いわゆる初日不算入の原則である。

 

では、取得時効の起算点は、文字どおり「占有を取得」した時点なのか、それとも、その翌日からなのか?

 

 

 

■説明

結論から言うと、民法の解釈としては、その翌日からと解されている(遠藤浩編『基本法コンメンタール第五版/民法総則』〔日本評論社、2000年〕226頁など〔内池慶四郎〕)。

 

例えば、京大の佐久間先生は次のように述べられる。

 

「上に述べた20年ないし10年の期間の開始点(起算点)は、時効の基礎になる事実たる占有が開始された時点(正確には、通常その翌日〔140条本文参照〕)であるとするのが判例である」(佐久間毅『民法の基礎1 〔第2版〕』〔有斐閣、2005年〕367頁)。

 

 

また、消滅時効に関しては初日不算入を明言する古い判例がある。

 

「消滅時効は権利を行使することを得る時より進行すべきは民法第166条の規定する所なれども、其時効期間の計算を為すに付き其期間が日週月又は年を以って定めたるものなるときは期間の初日を算入せざるは民法第140条の明文上毫も疑を容れざる所なりとす」(大判大正6年11月8日民録23輯1762頁。引用者が片仮名を平仮名にし、句読点を補った)。

 

そして、この理は取得時効でも別意に解する必要性は無いだろう。

 

 

但し、注意が必要なのは登記実務ではこうように解されていない場合があるということである。

 

即ち、

 

「登記原因の日付は、時効の遡及効(民144条)を理由に時効起算日とするのが実務の取扱いである」(鎌田薫ほか編『新 | 不動産登記講座・第2巻 総論 II 』〔日本評論社、1998年〕154頁〔松久三四彦〕

 

とする文献も存在するが、どうも、登記実務では必ずしもこのよう処理されていないこともあるようなのである(初日を算入することがある)。

 

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