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2007年5月 6日 (日)

【民法】 占有の概念の整理

今日は、時々質問を受ける、占有の概念について一言。

 

単なる知識整理用の記述なので、初学者向きの記述である。

 

尚、「所有の意思」、「自己のためにする意思」については別の拙稿をご覧頂ければ幸いである。

 

拙稿: 【民法】 「自己のためにする意思」と「所有の意思」
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_9167.html

 

 

 

■条文

(占有者による損害賠償) 第191条

占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。

 

 

 

■問題

191条但書からすると、191条本文の「善意の占有者」、「悪意の占有者」は自主占有者であることが前提になっていることが分かる。

 

では、「悪意の占有者」、かつ、自主占有者の具体例を挙げられるだろうか?

 

挙げられるのであれば、問題は無い。以下の記述を読む必要は全く無い。むしろ、以下の記述に間違いがあればご指摘頂きたい(笑)。

 

ちなみに、悪意の自主占有者の具体例の1つは、窃盗犯である。

 

 

 

■説明

まず、191条では「善意」・「悪意」という文言が登場する。

 

そして、道垣内先生がどこかで指摘されていたことだが(法学教室だったか、民法解釈ゼミナールだったか……?)、「善意」・「悪意」という言葉が登場した際には、「何についての『善意』・『悪意』か」ということを常に意識することが重要である

 

拙稿: 【民法】 善意・悪意
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_c948.html

 

そして、この場合の善意・悪意の対象は本権である。

 

ここに、本権とは、

 

「所有権・賃借権・質権など、占有することを法律上正当とする権利」(遠藤浩ほか編『民法(2) 物権 〔第4版増補版〕』〔有斐閣、2003年〕125頁

 

を言う。

 

したがって、窃盗犯は違法に物の占有を自己の支配下に移転した者であるから、本権を有していない。

また、自己に本権が無いことについても悪意と考えられる。

 

 

また、自主占有とは

 

「占有者が所有の意思をもってする占有」

 

であり、所有の意思とは

 

「所有者と同じように物を排他的に支配しようとする意思」

 

を言う(佐久間毅『民法の基礎2 物権』〔有斐閣、2006年〕275頁)。

 

 

そして、所有の意思の有無は、その権原の客観的性質によって決せられる。

そのため、窃盗行為には所有の意思が認められると考えられている。

 

 

 

■まとめ?

占有には様々な概念がある。

 

占有権が認められるということと、本権が認められることは別である。

そして、占有者の主観と、本権には関係がある(善意占有者・悪意占有者の概念)。

しかし、占有者の主観と、「所有の意思」や「自己のためにする意思」は無関係である。

 

疑問に思った場合や混乱した場合は、是非、定義に立ち返って頂きたい。

古人曰く、「急がば回れ」。


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