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2007年6月 3日 (日)

【憲法】 処分に対する違憲審査基準について・その1

今日は、時々質問を受ける処分に対する違憲審査基準について

 

ここは、私も学生時代によく理解することができず、先生に直接質問に行ったことがある。

 

ただ、処分の違憲審査基準については様々なアプローチの仕方がある。

 

そのため、私がここで説明するものが唯一の正解というわけでは全く無い。

 

 

 

■4つの過程

私が理解している処分の違憲審査基準は、4つの過程から構成されている。

 

即ち、

 

1. 根拠法令の合憲性

2. 処分の理由の合憲性

3. 処分の効果の合憲性

4. 行政手続法と31条の関係

 

である。

 

本稿では2.の概略部分まで説明する。

 

 

 

■根拠法令の合憲性

第1の過程である根拠法令の合憲性についての説明は省略する。

どの憲法の基本書にも記してあるはずである。

 

 

 

■処分の理由の合憲性

第2の過程である処分の理由の合憲性とは、当該処分を行うに際して憲法上考慮して良い事由だけが考慮されているか否かを判断することを意味する。

 

例えば、国公立高校の学生が特定の信条を有していること(だけ)を理由に退学処分に付された場合は、 この処分の理由の合憲性に欠けるので、違憲と考えられる。

 

何故ならば、そのような処分は、特定の信条を有していることを理由としている点で、 内心に留まっている限り絶対的な保障を与えられる思想・良心の自由(19条)に反していると考えられるからである。

 

そして、この理由の合憲性を判断する際は、基本的には、第1の過程である法令の違憲審査基準と同様の処理をすれば良い

 

即ち、

 

(1) 当該処分(ここでは退学処分)が防止対象としている害悪や問題点の発生を防止することが、問題となっている権利・自由との関係で「やむにやまれぬもの」・「重要」・「正当」かを判断し (目的の判断

 

(2)  当該処分と当該害悪発生防止との間に「必要不可欠な関係」・「実質的関連性」・「合理的関連性」があるか否かを判断する (関連性の判断

 

という作業である。

 

(1)の部分が分かりにくいかもしれないので補足しておくと、 公権力主体によって処分が為される場合というのは、通常は何らかの害悪や問題が発生する場合である。

 

つまり、何らかの害悪・問題が発生するからこそ、 公権力主体は一定の処分をするわけである。

 

例えば、不衛生な飲食店に対して営業停止処分をする場合は、客の生命・ 身体に対する侵害や病気の蔓延などという害悪が発生するからこそ、営業停止処分をする訳である。

 

そして、ここで重要なのは、(1)「目的の判断」の部分である。

 

端的に言えば、

 

「いかなる利益と利益とが対立しているのか」

「その対立の結果、 誰のどのような権利・自由が誰によって侵害されているか」

 

を考えることが非常に重要である。

 

何故ならば、ここが正確に理解できているのであれば、処分に関する憲法問題――少なくとも各種試験で問われるレベルの問題―― は正確に理解できていると言えるからである。

 

 

ちなみに、各種試験などでもこの箇所に少なからぬ点数が配分されているそうである。

 

この箇所に関する具体例などについては次回。

 

つづく

 

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学問・資格」カテゴリの記事

コメント

いつも拝読しています。
質問なんですが,
実質的関連性と合理的関連性の違いは,何なのでしょうか?
非嫡出子相続差別の一連の判決の反対意見などで実質的な関連性という言葉が出てきますが,
それから判断すると,立法事実を考慮するか否かが違うという理解でいいのでしょうか?

投稿: i | 2007年6月 4日 (月) 09:54

iさん、コメントありがとうございます。

実質的関連性と合理的関連性の違いは漠然とイメージでしか理解していませんでしたので、時間がとれ次第、お調べしてお答えしたいと思っております。

取り急ぎ、お返事までに。

投稿: shoya | 2007年6月 5日 (火) 12:35

お手間をかけてすみません。
ありがとうございます。

投稿: i | 2007年6月 7日 (木) 08:42

shoya 様
 いつも分かりやすい記事を有難うございます。漠然と理解していた部分がスッキリ解決する秀逸の記事ばかりです。

 そこでお願いです。この「処分に対する違憲審査基準・その1」の続きを書いて頂けないでしょうか。これまた私が長らくきっちり理解できていないところでした。
 宜しくお願い致します。

投稿: | 2008年10月24日 (金) 12:31

コメント、有難うございます。

また、リクエストを下さいまして、大変嬉しく存じます。

ただ、問題は当時の私が何を書こうと思っていたのかが不明になってしまっているという点です(笑)。

今となっては、効果の合憲性、行手法と31条の関係はごく在り来たりのことしか思いつかないのですが……さて、何を書こうと思っていたのか(^^;)

投稿: shoya | 2008年11月10日 (月) 22:22

お返事有難うございます。
無理なお願いをしてしまいすみませんでした。
一年以上前の記事ですものね。

投稿: | 2008年11月27日 (木) 00:24

こんにちわ、先日はお勧めの判例集お教えくださりありがとうございました。

私も今更で申し訳ないのですが、「利益と利益の対立」をどのようにして目的審査を行うに当たって反映させていけばいいのでしょうか?
思い出せる範囲ででもお教え願えたら有難いですm(__)m

投稿: noby | 2009年2月12日 (木) 21:45

nobyさん、コメントありがとうございます。

Donさんからもご要望を頂戴いたしましたので
近いうちに続編を書かせていただきたいと考えて
おります。

概要を簡単に申し上げれば、目的審査では基本的に
利益衡量の判断を行います。

利益衡量というと語弊がありますが、当該公権力
行使が実現しようとしている利益と、当該公権力
行使によって制約される利益とを憲法的観点から
判断する――つまり、最大多数の最大幸福が必ず
しも制約の正当化原理とはならない利益衡量を
行う――という作業を目的審査では行います。

ただ、この考え方も違憲審査基準の1つの考え方に
過ぎません。その意味で絶対的に正しいという
訳では勿論ありませんが、有力な見解だと思います。

投稿: shoya | 2009年2月16日 (月) 20:09

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