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2007年10月13日 (土)

【憲法】 平等原則の違憲審査基準についてのメモ・その2

 

先日、質問を受けたので、以前にも書いたことがあるが、今日は平等原則の違憲審査基準について、 一言。

 

【憲法】  平等原則の違憲審査基準についてのメモ
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_1b8d.html

 

今回も、前回と同様、基本的な事項についての説明である。

もし、私の誤解や不正確な記述がある場合、ご指摘頂ければ幸いである。

 

 

 

■条文

憲法14条1項

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、 社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

 

 

■基本的視点

平等原則の問題が出題された場合、最初に考えるべきことは以下の事項である。

 

即ち、

 

(1)  誰の権利・利益と誰の権利・利益とが

(2)  どの点に着目して

(3)  どのように区別されているか

 

である。

 

 

 

■誰と誰の権利・ 利益を問題にしているのか?

ここで注意すべきことは2つある。

 

第1は、制約対象となっている権利・ 利益が人権である場合、それ自体が憲法上の問題になる、ということである。

 

例えば、阪神ファンの表現の自由は制約するが、それ以外の者の表現の自由は制約しない、という事例があったとする。

 

これは、もちろん、阪神ファンとそれ以外の者との間で”差”があるので、14条の問題にはなり得る。

だが、それ以前に阪神ファンの表現の自由の制約それ自体が憲法上の問題である

 

したがって、この場合は、14条を検討するより先に21条を検討する必要がある。

 

 

第2は、「誰と誰の間で」、「何が」区別されているかを明確に意識することが必要である。

 

この意識の必要性は、例えば、学生年金訴訟をベースにした問題を解いて頂ければ分かると思う。

答案の中には混乱した答案が存在する可能性が高い。

 

 

 

■どの点に着目しているのか?

平等原則の違憲審査基準を導くための要素は、基本的には2つに大別できる。

 

即ち、区別のための着目点と、区別されている権利・利益の性質である。

 

 

まず、前者について説明する。

 

これは、様々な基本書や予備校本に書いてあることだが、14条1項後段列挙事由に着目した区別は、不合理性が推測される。この推測は、 歴史的経験則に基づく。

 

そして、この区別の不合理性は、後述する「区別されている権利・利益の性質」の問題とは一応、次元を異にする。

 

つまり、重要性が低い権利であったとしても、その権利が14条1項後段列挙事由に着目して――例えば、人種に着目して―― 区別されている場合には、やはり不合理性が推定される。

 

換言すれば、着目点だけで、審査基準が厳しい方向へ基礎付けられる。

 

 

次に、後者の「区別されている権利・利益の性質」について説明する。

 

これは、一般的な違憲審査基準で為されている議論と同じである。

例えば、区別されている権利・利益が表現の自由のように重要性の高いものであれば、審査基準は厳しい方向へと向かう。

 

 

したがって、平等原則の違憲審査基準を考えるに際しては、 区別のための着目点区別されている権利・利益の性質を総合考慮する必要がある。

 

この点については、上記拙稿も参照して頂ければ幸いである。

 

 

 

■どのように区別されているか?

区別が合憲か否かは、上記論証によって導かれた違憲審査基準に基づいて判断される。

つまり、いわゆる目的と手段の審査で判断される。

 

その際に注意すべきは、目的の部分である

 

学生の方の答案では、法令違憲が問題になっている事例において、 ここで法律自体の立法目的についての判断をしていることが多い。

 

しかし、これは誤りである

 

ここで判断すべきなのは、問題となっている区別をすることが必要最小限度か・重要か・ 正当かという事項である。

 

言い換えれば、ここで判断すべきは区別についての立法目的の合理性であって、法律自体の立法目的の合理性ではない。

 

 

これは、例えば、尊属殺重罰規定事件(最大煩昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁)を見れば分かる。

 

最高裁は、尊属殺の加重目的と差別の合理性について、次のように述べる。

 

「刑法200条の立法目的は、 存続を卑属またはその配偶者が殺害することをもって……高度の社会的道義的非難に値するものとし、……通常の殺人の場合より厳重に処罰し、 もって特に強くこれを禁圧しようとすることにある。」。

 

「尊属に対する尊重報恩は、 社会生活上の基本的道義というべく、…… 刑法上の保護に値する……。」。

 

「尊属の殺害は通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的非難を受けてしかるべきであるとして、このことをその処罰に反映させても、 あながち不合理であるといえない。」。

 

以上のように、最高裁は、尊属・卑属という社会的身分に着目して区別をする目的の合理性を判断している。

刑法自体の立法目的の合理性を判断しているわけではない。

 

 

 

■まとめ

繰り返しになるが、平等原則が問題になる場合の基本的視点は

 

(1)  誰の権利・利益と誰の権利・利益とが

(2)  どの点に着目して

(3)  どのように区別されているか

 

である。

 

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