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2007年10月20日 (土)

【刑訴】 逮捕前置主義と事件単位原則について

 

今日は、質問を受けたので、逮捕前置主義が問題になる場合と事件単位原則(事件単位説) が問題になる場合の区別の方法について、一言。

 

 

 

■問題


| …A罪で逮捕


| …A罪で勾留 + B罪で勾留

 

XがA罪の被疑事実で逮捕され、その後、 A罪の被疑事実で勾留されると同時にB罪の被疑事実でも勾留された。

このB罪の被疑事実を理由とする勾留は適法か?

 

このような問題において、問題になるのは逮捕前置主義か、それとも事件単位原則か。

どちらも問題になり得るのであれば、その区別基準はどこにあるのか?

 

 

 

■定義・趣旨

逮捕前置主義とは、「被疑者の勾留には、逮捕が先行しなければならない」とする考え方を言う (長沼範良ほか『演習刑事訴訟法』〔有斐閣、2005年〕72頁〔佐藤隆之〕)。

 

そして、逮捕前置主義の趣旨については争いがあるが、最近は、 「逮捕期間中さらに捜査の過程を経ることで、不必要な身柄拘束を防ぐ」という点にあると解されている(前掲・ 佐藤74頁)。

 

 

事件単位の原則とは、「逮捕・勾留の効力については、 逮捕状又は勾留状に記載された被疑事実を基準に考え、その効力は、当該被疑事実のみに限られ、それ以外の犯罪事実には及ばない」 という考え方を言う(三浦正晴=北岡克哉『令状請求の実際101問』〔立花書房、平成14年〕106頁)。

 

そして、事件単位の原則の趣旨は、 手続上顕在化していない被疑事実によって身柄拘束下にある者を不利益に扱うことを防止するという点にある。

 

 

 

■説明

では、上述したB罪の勾留において問題になるのは、逮捕前置主義か、それとも事件単位原則か?

 

実は、本稿の問題設定では答えを1つに絞ることはできない。場合分けが必要である。

 

即ち、A罪とは別にB罪について勾留状が発付される場合は逮捕前置主義の問題であり、勾留状が発付されない場合は事件単位の原則の問題である。

 

これは、趣旨からすれば自ずと答えが出るものと思われる。

 

つまり、A罪とは別にB罪について勾留状が発付される場合、B罪の被疑事実は勾留状に記載されている(規則70条など参照)。 したがって、B罪の被疑事実は手続上顕在化している。

 

よって、事件単位原則の趣旨を見れば分かるように、事件単位原則は問題にならない。

むしろ、この場合に問題になるのは逮捕前置主義である。

 

 

他方、A罪とは別にB罪についての勾留状が発付されていない場合、B罪の被疑事実は手続上顕在化していない。

言い換えれば、その場合の裁判官・検察官は、A罪の勾留状でXを勾留しようとしている。

 

これは端的に事件単位原則の問題である。

したがって、逮捕前置主義は事件単位原則をクリアして初めて問題になり得る。

 

但し、事件単位原則をクリアする場合とは、A罪とB罪を実質的に同視できる場合であるから、逮捕前置主義もクリアできる。よって、 逮捕前置主義に抵触することは無いだろう。

 

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