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2008年5月 9日 (金)

【会社法】 賠償責任と弁済責任

 

今日は、会社法上の賠償責任と弁済責任について、一言。些細な知識ですが。

 

 

 

■条文

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任) 第423条1項

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

(役員等の連帯責任) 第430条

役員等が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。

 

 

(剰余金の配当等に関する責任) 第462条1項柱書

前条第1項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、

当該行為により金銭等の交付を受けた者 並びに

当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(委員会設置会社にあっては、執行役。以下この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下この節において同じ。) 及び

当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者

は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。

 

 

 

■説明

会社法には取締役の責任を定める規定が幾つかありますが、それらで定められている責任の性質は常に同じではありません。

 

即ち、会社法上の取締役の責任には、賠償責任といわゆる弁済責任があり、それらは別物と解されています。

ちなみに、これらの責任の性質は、旧法では主として266条1項の解釈として論じられていました。

 

 

賠償責任とは、いわゆる損害賠償責任のことであり、例えば、会社法423条1項や430条が規定している責任がこの賠償責任です。

 

会社法上の多くの責任はこの損害賠償責任に当たります。

 

 

他方、弁済責任とは、損害を賠償するために課される責任ではなく、出捐を回復するために課される責任のことです(正確な定義を紹介したかったのですが、私の周囲にある――手が届く範囲にある――文献では定義を発見することができませんでした)。

 

弁済責任の典型的な規定としては会社法462条があります。

 

462条は、「損害を賠償する責任」423条1項)という文言ではなく、意図的に「金銭を支払う義務」という文言を用いています。

 

これは462条によって課される責任が賠償責任ではなく、弁済責任であることを示しています。

 

具体的に申しますと、462条の効果として、461条1項違反行為をした取締役や株主などは出捐した額を全額弁済する責任を第一次的に負うことになります。

 

言い換えれば、462条によって取締役が負う責任は、会社が株主に違法に分配された金銭の返還を請求をして回収できなかった場合に――いわば第2次的に――その未回収分について生じる責任ではありません。

 

会社の請求の成否を問わず配当額全額について第1次的に負う責任なのです。

 

 

このように、賠償責任と弁済責任はその性質を異にします。

 

そして、430条が定めているのは賠償責任についての連帯責任であり、同様に462条1項柱書が定めているのは弁済責任についての連帯責任です。

 

したがいまして、ある1つの同じ行為について、賠償責任を負う取締役Aと弁済責任を負うBがいたとしても、会社法上は、当然には取締役Aと取締役Bは連帯債務を負うわけではありません。

 

もし、この取締役Aと取締役Bに連帯債務を負わせるべきと考えるのであれば、会社法上の規定を解釈するか、もしくは一般法たる民法の解釈を施す必要があるのではないか、と思います。

 

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