【余談】 書評:小宮一慶『「1秒!」で財務諸表を読む方法』
知人に薦められて、小宮一慶
『「1秒!」で財務諸表を読む方法』 (東洋経済新報社、2008年)を拝読いたしました。
この本は財務諸表の入門書として非常に優れていると思いました。
会社法を学ぶ方は、本書を併せて読まれると、会計の部分が立体的に理解できるようになるのではないかと思います。
そして、本書の最大の特徴は以下の2点にあると思います。
■経営的に理解できれば十分
第1は、「経営的に理解できれば十分」というスタンスで書かれている点です。
小宮さんは次のように述べられます。
「ビジネスマンが自分の仕事やキャリアに役立つようにと会計を勉強するときに、最初につまずくのが貸借対照表です。ビジネスマンは『経営的』 に会計を理解すれば十分です。必要もないのに『会計的』に勉強するから、嫌になるのです。会計的に勉強、とは貸借対照表の作り方や『仕訳』 などを勉強することです。経理でも担当しない限り、ビジネスマンは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表の作り方を知る必要はないのに、 そこからアプローチしようとするから会計が分かりにくくなるのです。」(18頁)。
これは財務諸表の「入門書」を手に取る読者のニーズを的確に捉えていると思います。
そして、本書は、一貫してこの観点から書かれており、複雑な議論は別の書籍に委ねています。
その意味で、本書は、財務諸表に関する基礎知識を概観するという需要に合致しているのではないかと思います。
■身近な話題で興味を持続させる
第2は、常に身近な話題をネタにして説明が為されているという点です。
一定の体系的知識の入門書は、正確性を保とうする為に、得てして砂を噛むような記述で終わってしまいがちです(例えば、道垣内先生の 『ゼミナール民法入門』が出るまで、民法の入門書はこのような状況でした)。
ですが、本書は、まず目次の章立てからして興味深そうなものが並んでいます。
第1章
「1秒だけ財務諸表を見るなら、どこを見るか?」―貸借対照表
第2章
「なぜ、国の財務は破綻しないのか?」―損益計算書
第3章
「なぜ、リニアや第二東名はなかなか完成しないのか?」―キャッシュフロー
第4章
「なぜ、IT企業はブランドにこだわるのか?」―固定費と変動費
第5章
「なぜ、航空券には早割り格安チケットがあるのか?」―増し分利益
第6章
「なぜ、液晶テレビの価格はどんどん下がるのか?」―直接原価計算
第7章
「なぜ、小林製薬ではヒット商品が次々と生まれるのか?」―PPM
第8章
「なぜ、企業業績は良いのに『現金給与総額』は上がらないのか?」―付加価値
また、各章のトピックも、
「貸借対照表を見れば外資ファンドに狙われる会社が分かる」
「なぜ、花王はカネボウの化粧品部門を買収したか?」
「ファンドが儲ける仕組み」
「なぜ、イオンはダイエーを関連会社にし、子会社にしないのか?」
「なぜ、日産はハイブリッドカーや燃料電池車の開発が遅れているのか?」
「なぜ、IT企業は儲けにくい球団を持ちたがったのか?」
などといった身近な話題を豊富に取り込んでおり、本書は、読者の興味を持続させつつ、的確に情報を伝達しています。
著者の小宮さんは緻密な構成を本書で展開されていると言えると思います。
■難点
若干の難点を言えば、索引がないことでしょうか。
もちろん、入門書である以上、索引のニーズがそれ程高い訳でもないと思いますが、 優れた書籍は何回も読まれたり調べられたりする対象になる以上、索引があればより良かったのではないかと思います。
とは言え、これだけの良書が1500円というのは大変お買得だと思います。
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この記事へのコメントは終了しました。


コメント
以前一度書き込みさせていただいた者です。
試験後、暇を持て余していまして、
会計について勉強してみようかと思っていましたので、
shoyaさんお勧めの本であればということで
早速購入してみました。
以前、会計学の超入門書を読んだときには、
つまらないなー、との感想しかありませんでしたので、
この本には期待大です。
投稿: 新司受験生 | 2008年5月28日 (水) 00:02
新司受験生さん、コメントありがとうございます。
そして、新司法試験お疲れ様でした。
私のような不束者の推薦が、新司受験生さんのご期待に沿えるか
どうか若干不安ですが(笑)、ご満足頂ければ望外の喜びです。
お時間がございましたら、ご感想等をお聞かせ下さい。
投稿: shoya | 2008年6月 3日 (火) 19:05